研究課題
1,わが国における血漿HDLの著明かつ持続的な上昇について、原因となる可能性のある要素を解析した。まず、この現象について、性別、年齢別のパターンの特異性を解析した。その結果、最も顕著な変化は四十から五十代の女性で、女性に於ける加齢にともなう血漿HDLの変化が、30年前の「単調減少」から四十から五十代を頂点とする「山型」に変化して来ている。男性にはこの様な変化は顕著で無く、各年齢平均的に増加を示している。これらの性別年齢別特異的な変化に基づいて、血漿HDL濃度に関わる可能性がある生活習慣因子として、食餌因子、アルコール摂取、肥満度(BMI)、喫煙などの影響を解析した。これらの因子は全て血漿HDLの変化との特異的関係は示さなかった。唯一興味ある関連性が示されたのは肉類と魚介類の摂取率との関連性である。我が国の食品摂取の著明は変化は、1990年頃からの魚介類摂取の急激な減少と肉類摂取の増加であり、魚介類/肉類摂取比率の世界に類を見ない急激な低下である。そして興味深いことに、各性別年齢別群において魚介類/肉類摂取比率の低下と血漿HDLの増加に強い相関が認められた。これはこれまでの知見として知られているω3脂肪酸摂取がHDLを増加させるという結果と明らかに矛盾するものであり、さらに詳細な検証が必要とされる。最終年度に、この現象の実験的検証が可能かどうかを繊維芽細胞におけるABCA1依存的HDL産生におけるω6脂肪酸(オレイン酸)とω6脂肪酸(EPA)の影響を観察したが、公衆衛生学的現象と矛盾しない十分な観察結果は得られていない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Journal of Atheorclarosis and Thrombosis
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