研究課題/領域番号 |
21K11592
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水谷 壮利 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任准教授 (00376617)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | COVID-19 / microbiome / SARS-CoV-2 / dysbiosis / microbiota |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症は肺や気管を中心とする急性炎症のほかに、軽度の症例であっても、およそ10%の患者に腹痛や、嘔吐、下痢といった消化器症状が頻繁することも特徴である。また後遺症を訴える患者では実に20%の患者で胃腸症状が観察されることが報告されている。COVID-19は主に呼吸器系の疾患であるが、新型コロナウイルス感染において、その感染に腸内細菌叢がどのように影響するのか、またCOVID-19感染症の発症にどのように関与するのかは不明な点が多い。
初年度に解析した軽症のSARS-CoV-2感染患者の22名を対象に、新型コロナウイルス罹患後の感染者の腸内細菌叢と血中の炎症状態の相関について、論文発表を行った。 次年度の本年は解析対象を、免疫不全を患うHIV罹患者に広げ、免疫不全症におけるSARS-CoV-2感染による腸内細菌叢の変化とその病態進行について相関解析を行った。前提として、慢性的な炎症を持つHIV罹患者は、加齢性の基礎疾患の保有率が高く、特にCD4陽性T細胞数が低い場合や、血中HIV粒子数のコントロールができていない場合、COVID-19の重症化リスクが高まる可能性が知られている。今回、SARS-CoV-2感染した12名のHIV罹患者を対象とした解析ではCOVID-19発症直後から、Clostridia綱に属する短鎖脂肪酸産生菌の顕著な減少や、大腸炎との相関が報告されている日和見病原菌の増加が健常者に比べ、増して観察され、この変化は発症から1ヶ月以降でも続いていることが判明した。おそらくこれらは免疫学的な脆弱な体内環境下では細菌叢の変化がより大きく、また健常者に比べ回復しにくい傾向があることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸内細菌叢解析は検体の取得から順調に進んでおり、計画的に推移している
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている免疫不全患者における新型コロナウイルス感染症の病態と腸内細菌叢の相関についての論文投稿を進めている。 また、腸内環境異常が 新型コロナウイルスの後遺症の発症において、何らかの役割を果たしている可能性が指摘されているため、後遺症と腸内細菌叢の相関解析についても解析を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に研究論文投稿が完了しなかったことから、次年度に一部の金額(論文投稿費予定額)を繰り越すが、計画通りに支出予定である。
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