サルコペニアは骨折や運動機能の低下によって寝たきりの原因になるほか、認知症のリスクファクターとしても知られている。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)は生体内で多くの反応の補酵素として用いられる。体内のNAD量は加齢に伴って減少することが知られている。特に骨格筋ではNAD量の減少が顕著であり、加齢による骨格筋機能の低下との関連が示唆されている。そこで、本研究ではNAD代謝と骨格筋機能の関連について解析している。 今年度はNAD合成に関わる酵素であるNAD synthetase (NADS)のノックアウトマウスを解析した。NADSは骨格筋には発現していない酵素であるが、本マウスの骨格筋ではNAD量が顕著に減少していた。また、NADSのノックアウトマウスでは野生型マウスと比較して筋力や持久力といった骨格筋機能が低下していた。このことから、骨格筋機能におけるNAD代謝の重要性が明らかになった。
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