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2022 年度 実施状況報告書

FoxO3による非アルコール性脂肪肝炎抑制機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K11595
研究機関長崎大学

研究代表者

小松 利光  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 技術職員 (70380962)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードFoxo3 / 非アルコール性脂肪肝炎 / 肝がん
研究実績の概要

肝細胞特異的Foxo3欠失マウス(LKO)は、脂肪肝にはなるが非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に進行しない。Foxo3転写因子は、肝臓の脂肪合成や老化の基盤となる細胞レベルの軽微な炎症を制御すると考えられることから、炎症を惹起されやすいマクロファージ特異的Foxo3欠失マウス(Lysm-Foxo3KO)とLKOマウスを交配したダブルコンディショナル欠失マウス(dcKO)で通常飼料(RD)によるNASH誘導を試みた。しかしながら52週齢時点で、dcKOマウスの体重、摂食量に有意な増加は見られなかった。線維化誘導負荷をかけるため55週齢から一部マウスに高脂肪食(HFD)を与えて6ヶ月間飼育したところ、dcKO-HFD群で有意に体重が減少し、肉眼的に50%(2/4匹)で肝がんが認められた。低体重マウスと肝がん個体は一致していることから、がんによる体重減少と考えられる。コントロール(Cnt)-HFD群では肝がんは観察されなかった。また、通常食群ではCnt、dcKOマウスともに異常は認められなかった。
上述のモデルとは別に、Cnt、LKOマウスにGAN飼料(高脂肪・高コレステロール・フルクトース)を与えて人工的にNASH化誘導する実験群を作製し、Foxo3欠失による影響を検証した。GAN開始後32週(44週齢)、38週経過時点(50週齢)のdcKOマウスの体重・摂食量は、Cntマウスと有意差はなかった。肉眼的に肝臓がんと見られる所見は各群1検体ずつ観察された。線維化進行度を検証するため、50週齢モデル(n=4)でシリウスレッド染色を行い、オールインワン蛍光顕微鏡(BZ-X700、キーエンス)で対物20倍・約400視野での染色面積を測定した。その結果、LKO-GANマウスで線維化が多い傾向が見られたが、統計的有意差はなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

実験計画通り、dcKOマウスを作出し通常飼育による影響を長期観察した。しかしながら予測では通常食で表現型に差異が見られると考えていたが、予測に反し差が見られなかったため、高脂肪食(HFD)を与えて線維化を促す実験に切り替えた。その結果、dcKO-HFDマウスで肉眼的に肝がんが認められた。今後は病理学的評価および分子生物学的手法により、NASH化におけるFoxo3欠損の影響を検証する。
LKOマウスに長期にGAN飼料を与えて人工的にNASH化する実験群(44週齢、50週齢モデル)を作成し、肝細胞におけるNASH化におけるFoxo3欠損の影響を検証した。現在炎症や線維化のマーカー等による表現型解析の途中である。
計画では本年度に肝臓のシングルセル解析を行う予定であったが、NASHを誘導するために長期飼育する必要が生じたため、表現型解析に遅れが生じた。今後シングルセル解析が行えるかどうか、表現型解析が完了した時点で判断する。

今後の研究の推進方策

炎症・線維化マーカーや関連する遺伝子発現、免疫染色を行い、dcKOマウスのHFD群での表現型評価、並びにLKOのGAN投与NASHモデルでの表現型評価を継続する。特にシリウスレッド染色等の画像解析では、画像取得の容量・時間的制約上精度の低い画像での解析も多く含まれており、実験精度に影響している可能性があるため、高精度画像での再評価も検討する。
NASH化に対するFoxo3欠損の影響が確実となった場合、予定通り肝臓からシングルセルを調製し、シングルセル解析システム(C1及びChromium)を用いてシングルセル単位でcDNAライブラリーを構築し、次世代シーケンサーによる包括的トランスクリプトーム解析を行う。この解析データと公開されている野生型・高脂肪食等の実験モデルデータの比較解析を行い、Foxo3依存的に変動する遺伝子群とマクロファージのサブセットを同定する。それにより、Foxo3を基軸としたNASH発症機構を明らかにしたい。

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公開日: 2023-12-25  

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