研究課題/領域番号 |
21K11597
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
久保 薫 奈良県立医科大学, 医学部, 教育教授 (20254493)
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研究分担者 |
友田 恒一 川崎医科大学, 医学部, 教授 (90364059)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / シンバイオテイクス / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
自己免疫疾患、なかでも関節リウマチ患者は高齢化社会の進行とともに増加しており、根治的な予防・治療法の開発が急務である。近年、腸内細菌と関節リウマチの発症・進展との関連に関して研究が進められているが、予防・治療方法には至っていない。 これまでシンバイオテイクス【GFOB, G:グルタミン, F:食物繊維(ポリデキストロース), O:オリゴ糖(ラクチュロース), B:ビフィズス菌 の混合物】の8週間の摂取が①自然発症高血圧ラットの喫煙曝露により誘発される肺気腫の気腔形成、②Ⅱ型糖尿病マウスにおける皮膚の創傷遅延、③Lewis系ラットのイミキモド軟膏塗布による乾癬様皮膚炎の紅斑と肥厚及び④慢性腎疾患の進展を改善すること並びにGFOとBの組み合わせが不可欠であることを見出した。加えて、GFOBの8週間の摂取が関節リウマチモデルであるLewis系ラットのアジュバント関節炎における腫脹及び骨破壊を軽減し、更に腸内細菌叢の大半を占めるBacterodetes門とFirmicutes門の不均衡が認められたが、GFOBの摂取により改善され、また有機酸の産生に関与するActinobacteria門の占有率(%)が有意に増加し、酢酸と酪酸の糞便中濃度が有意に増加した。 これらの結果により、二次リンパ組織の一種である粘膜関連リンパ組織(Mucosa-associated Lymphoid Tissue, MALT)、その代表格である小腸のパイエル板を介した自然免疫や獲得免疫の関与が推察された。一方、ビフィズス菌が最も多く生存する大腸のMALT、GFOBの改善効果と自然免疫や獲得免疫の関連は明らかではない。シンバイオテイクスの概念を基に大腸のMALTを標的とした研究に展開することは、新たな自己免疫疾患の予防・治療方法の開発の一助と成るものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Lewis系ラットのアジュバント関節炎における腫脹及び骨破壊を軽減したGFOBの再現性を検討したところ、アジュバント関節炎の誘発後に軟便あるいは下痢を発症する個体が現れ、この場合は腫脹の軽減が認められなかった。そこでポリデキストロースを2分の1に調整し、またラクチュロースを約6分の1に調整して改変したGFOB(改変GFOB)のアジュバント関節炎の腫脹への効果を検討したが、軟便あるいは下痢の発症は見られないものの腫脹の軽減には至らず、腸内細菌叢の不均衡も改善されなかった。GFOBあるいは改変GFOBを8週間摂取させた後において、GFOB摂取による酢酸と酪酸の糞便中濃度が有意な増加に再現性は得られたが、改変GFOB摂取では認められなかった。一方、盲腸内IgA量にGFOB摂取あるいは改変GFOB摂取のいづれも影響しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
GFOBによるアジュバント関節炎おける腫脹の軽減の再現性が得られない原因の究明とGFOB摂取とアジュバント関節炎誘発後の軟便あるいは下痢発症との関連性とその解決策を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究に必須なラット足蹠の腫脹を測定するラット専用型プレシモメーターが経年劣化により破損したっため、新規購入に次年度使用額は必要となった。
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