がん治療においては、粘膜障害による腸管免疫低下、さらには治療効果および栄養状態の悪化が懸念されている。近年、従来のものより副作用の少ない経口抗がん剤として分子標的薬が注目されているが、特有の副作用である腸管障害による消化器症状が高頻度に発現することから使用に関して課題は多い。また、腸管と密接に関係する免疫および栄養状態を改善するには介入が必要であるが、医薬品には使用制限があるため、機能性を有する食品成分の利用に期待が持たれている。 本研究では、分子標的薬による腸管免疫および栄養状態の低下を生体外から予測できるマーカーを見出し、この副作用を回復させる食品成分を特定することを目的とし、検討を行った。 2021年度においては、Wistar 系雄性ラットを用いて、分子標的薬投与後のRat α-defensin 5およびその上流に位置するToll - like receptor 4 mRNA発現量、さらにImmunoglobin (Ig) A分泌量を評価した。使用薬剤には、レゴラフェニブおよびエルロチニブ等を用いた。分子標的薬投与後1時間よりRat α-defensin 5 mRNA発現量の変動が確認されたが、小腸部位によりその挙動が異なることが明らかとなった。また、Rat α-defensin 5 mRNA発現量およびIgA分泌量に相関が見られた。
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