研究課題/領域番号 |
21K11601
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
深津 佳世子 (佐々木) 共立女子大学, 家政学部, 教授 (70338903)
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研究分担者 |
小林 翔 山形大学, 農学部, 准教授 (10779490)
鈴木 浩明 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (40344890)
中西 陽子 日本大学, 医学部, 准教授 (90366592)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | がん / アミノ酸 / 細胞培養 / 乳がん / 肺がん / 神経芽腫 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、①アミノ酸の一種であるβアミノイソ酪酸(BAIBA)ががん細胞の増殖を抑制するメカニズムの詳細を明らかにすること、②食事内容によって血中BAIBAが上昇する仕組みについて明らかにすること である。 1年目である2021年度には、培養細胞を用いてBAIBAが様々な種類のがん細胞の増殖を抑制する可能性について明らかにすることを目的として研究を行った。 培養ヒト乳がん細胞 (MCF-7)、ヒト肺がん細胞 (A549, HLC-1)、ヒト神経芽腫細胞 (NB69)、正常ヒト乳腺上皮細胞 (HMEC)にBAIBAを添加したところ、処理後96時間のコントロールと比較した細胞生存率はそれぞれ順に、56.4% (p<0.001)、89.1% (p>0.05)、69.2% (p<0.0001)、66.5%(p<0.01)、130.3% (p<0.05)となった。このことから、BAIBAは正常細胞に毒性を与えることなく(むしろ正常細胞の増殖を増加させ)、A549以外のがん細胞であるHLC-1, NB69で細胞増殖抑制効果を示すことが初めて明らかとなった。また、すべての細胞において処理後24時間以降の群では時間経過に伴うBAIBA添加群に有意差はみられなかったことからBAIBAによるがん細胞増殖抑制効果は24時間以内に現れることが初めて示された。さらに、本実験で同じ肺がんでも細胞種によってBAIBAの効果に違いがあったことを明らかにした。同じ部位のがんであっても、細胞特性の違いに着目することも有用であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で様々な困難は生じたが、できるだけ研究遂行に努めた。 とくに細胞培養実験は、連日の研究活動が必要で、緊急事態宣言下では大変な時もあったが、研究協力者とともに培養実験を繰り返し、様々な種類のがん細胞に対するBAIBAの作用についての真理を追究できていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、BAIBAが様々な種類のがん細胞の増殖を抑制する可能性について明らかにするために、培養細胞を用いた実験をメインに行った。今後は、様々な細胞種における、BAIBAのがん細胞増殖抑制メカニズムについて明らかにするために、BAIBAががん細胞に対して、アポトーシス、フェロトーシス、オートファジー等のどのような死に方をどのような割合で引き起こすのか、関連する遺伝子発現を調べ、明らかにしていく予定である。 本研究では、食事内容や運動という生活様式が血中BAIBAの上昇を介してがんを抑える仕組みを明示することで、標準的治療以外の新たながんの予防法・治療法を科学的根拠に基づいて提示していけると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
残金が少額な場合には研究に必要な物品を(金額が足りず)購入できないため、どうしても少額の残金が生じる。次年度を待った上で、研究に必要な物品を購入している。
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