研究実績の概要 |
近年、「ストレス反応は疲労感を覆い隠す」という説が報告されている。現在、市場には「疲労感を軽減する」という機能性表示のもと、GABAやテアニン、クエン酸など様々な機能性表示食品が出回っている。しかし、仮に、これらの食品が「ストレス反応を増強させることによって疲労感を覆い隠している」のだとすれば、疲労そのものが軽減されていないにも関わらず、疲労感のみが軽減されていることになる。すると、これらの機能性表示食品を摂取した人は仕事や運動を無理をして続けてしまうことで、鬱や過労死などのリスクが上昇してしまう可能性がある。よって、ストレス、疲労、疲労感を区別した機能性の評価が重要である。 今年度は、クエン酸を摂取させたのちにマウスを1時間遊泳させ疲労を負荷し、その時の疲労の度合いを評価するモデル「疲労感軽減効果評価モデル」と、強制遊泳により疲労困憊させた直後のマウスにテアニンを投与し、その後の疲労の度合いを経時的に評価するモデル「疲労回復効果評価モデル」の2つのモデルを用いてクエン酸の効果を検証した。その結果、クエン酸を摂取したマウスでは、1時間での遊泳距離が有意に延長し、クエン酸には疲労(または疲労感)の軽減効果があることが示された。昨年度検討したテアニン、および一昨年度検討したGABAでは、遊泳距離の延長に影響は認められず、クエン酸のみが遊泳距離を延長させた。一方、疲労感発生に関わる分子メカニズム(ATF3, ATF4, GADD34, IL-1β)の遺伝子発現にはクエン酸、テアニン、GABAの全てで変化が見られず、クエン酸による遊泳距離延長効果は、疲労の分子メカニズムとは異なる経路によってもたらされた可能性が示された。
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