最終年度は、「日本の機能性表示食品において届出されたシステマティック・レビュー(SR)についての横断研究:AMSTAR 2による質評価」という研究を実施した。これは、最新の届出されたSRの研究の質について、2017年にアップデートされたAMSTAR 2を用いて評価し、SRの不適切な方法となっているその特徴を明らかにすることを目的とした。2022年4月1日から2022年10月31日までに消費者庁HPに公表された記号番号HシリーズのSRで、具体的にはH1-H535の届出でSRの届出撤回を取り除いた519編のうち、ランダム抽出した40編のSRを評価した。 その結果、36編(90%)が定性的なレビューで、4編(10%)がメタアナリシスを実施したレビューであった。全体の信頼性評価では、「高(High)」が0編(0%)、「中(Moderate)」が0編(0%)、「低(Low)」が2編(5%)、「Critically low」が38編(95%)であった。とくに信頼性を下げていたのは、「プロトコールの事前登録の欠如」、「包括的な検索戦略の不備」、「バイアスリスク評価の結果を考察や結論に適切に反映していない」ことであった。このように2022年代という最近のSRにおいても質の向上がみられないことを明らかにした。 本研究では、当初の計画で掲げたすべての研究を完了することができた。要約すると、機能性表示食品制度において届出された科学的根拠としての臨床試験では、プロトコールと論文中に記載されている内容の不一致が多く、またバイアスリスクが高い論文が多いという重要な知見を得ることができた。また、SRにおいても、研究方法論としての質の低い届出がかなりの割合を占めることを明らかにすることができた。これは、今後の届出における質の向上を促すことの基盤となる成果であった。
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