エクソソームとは、体液中に存在する直径40-150 nmの脂質二重膜の小胞である。近年、疼痛時の血清から単離したエクソソーム中に存在する物質が疼痛強度の指標となることが報告された。しかし、エクソソームと疼痛強度そのものとの関連性は解明されていなかった。我々はこれまでに、坐骨神経を部分結紮した神経障害性疼痛モデルマウス (Partial sciatic nerve ligation: PSNL) の血清エクソソームにおいて、肝臓より分泌されたエクソソーム二重膜上で補体C5の発現が増加し、補体C5が痛みを悪化させることを発見した。 本研究では、PSNL以外の神経障害性疼痛モデルマウスを用いて、血清由来エクソソーム二重膜上の補体C5が、PSNL同様に疼痛強度の悪化に関与するのかの普遍性を明らかにすることを目的とした。 現在までの研究で、PSNLと同様に神経を部分結紮し作製する神経枝結紮損傷 (Spared nerve injury: SNI) や絞扼性神経損傷 (Chronic constriction injury: CCI) 誘発神経障害性疼痛モデル、および糖尿病性 (ストレプトゾトシン誘発Ⅰ型糖尿病モデル) 末梢神経障害モデルマウスの血清エクソソームにおいては、エクソソーム二重膜上で補体C5の発現が増加し、その産生臓器は肝臓であることを明らかとした。 一方で、抗がん剤であるパクリタキセル、およびオキサリプラチン誘発末梢神経障害モデルマウスの血清エクソソームにおいては、予想に反して補体C5の発現が減少した。 以上より、神経を結紮し作製するSNIやCCI、またストレプトゾトシン誘発末梢神経障害モデルマウスの血清エクソソームにおいては、肝臓より分泌されたエクソソーム二重膜上で補体C5の発現が増加し、補体C5が痛みを悪化させることを明らかとした。
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