研究課題/領域番号 |
21K11615
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
本橋 紀夫 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部, 室長 (50532727)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 骨格筋 / 筋萎縮 / 筋疾患 / サルコペニア / マイクロRNA |
研究実績の概要 |
デュシェンヌ型筋ジストロフィー (DMD)は筋萎縮及び筋力低下を呈する遺伝性筋疾患であり, エクソン・スキップ療法や遺伝子治療が期待される. 一方サルコペニアは, 加齢に加え, 不活動や摂取エネルギー不足など複合的な要因で生じる. DMDとサルコペニアは異なる病態であるが, 「筋萎縮」を治療標的とする点において共通する. 患者QOL低下を防ぐ為, 両者共に骨格筋量を維持する事が鍵となる.これまで, プロテオミクス解析によりDMD骨格筋で加齢と共に発現変化する新規タンパク質を同定した.これは核-細胞質間で物質輸送するRNA結合タンパク質であるが, 1)野生型に比べDMD筋において発現が高く, 2)年齢依存的に発現増加する事から, DMD病態および加齢に共通する『筋萎縮』との関連が予想された. さらに3) このタンパク質発現は脂質代謝を亢進させる事を見出した. そこで本研究では①骨格筋における新規RNA結合タンパク質を介した筋脂質代謝機構を解明し, ②DMD・加齢骨格筋との関連を明らかにする事を目指した. 2021年度は同定したRNA結合タンパク質と結合するmicroRNAs(miRNAs)を探索する為、網羅的発現解析を行い, RNA結合タンパク質の発現に呼応して変化するmiRNAsを複数同定する事ができた.RNA免疫沈降法によりRNA結合タンパク質と同定したmiRNAsが直接的に結合する事も確認できた.さらにRNA結合タンパク質および同定したmiRNAを筋芽細胞に対して過剰発現・発現抑制した結果, これらは同様に脂質代謝に関与する事が明らかとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021度は, 同定したRNA結合タンパク質と結合するmicroRNAs(miRNAs)を探索する為, RNA結合タンパク質を過剰発現,あるいは発現抑制した筋芽細胞を用いてmiRNAの網羅的発現解析を行った. その結果, タンパク質発現と呼応した発現パターンを示すmiRNAを複数同定し, さらにDMD及びサルコペニアと関連すると考えられるmiRNAを同定できた.RNA免疫沈降(RIP)法を用いて解析した結果, タンパク質と同定したmiRNAsが結合する事も確認できた.次に同定したmiRNAの筋芽細胞への影響を明らかにする為に過剰発現を行った結果, 脂質代謝機能が亢進している事が明らかとなった. これはDMDやサルコペニアにおいて発現の高いRNA結合タンパク質を筋芽細胞において過剰発現させた際にも同様の傾向を示し, RNA結合タンパク質とmiRNAは関連して脂質代謝を制御している可能性が考えられた.現在ではRNA結合タンパク質や同定したmiRNAの過剰発現や発現抑制ツールを作成しており, 出来上がったツールを用いて随時解析を行う予定である. 以上の通り, 研究計画はおおむね予定通り進行していると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から, RNA結合タンパク質とmiRNAは関連して脂質代謝を制御している可能性が考えられた. そこで2022年度は, 1) RNA結合タンパク質及びmiRNAの過剰発現・発現抑制細胞を用いて, 脂質代謝への影響を明らかにする. 次に2) RNA結合タンパク質及びmiRNAの生体内における影響を明らかにする. さらに3) miRNAのターゲット分子を同定し, 脂質代謝への影響を明らかにする事を目指す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
民間財団から支援を受けている研究内容が、科研費によって遂行される内容と一部重複している箇所が存在していた為、物品費等の支出の一部を優先的に民間財団からの研究助成金で賄った。 2022年度はマウスを用いた実験, 過剰発現・発現抑制用のアデノ随伴ウィルスベクターの合成・購入, 学会参加等を予定しており, 科研費より支出する予定である.
|