研究課題/領域番号 |
21K11618
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中嶌 岳郎 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (30581011)
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研究分担者 |
田中 直樹 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (80419374)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 硫酸化糖脂質 / スルファチド / 老化促進モデルマウス |
研究実績の概要 |
脳に特徴的にみられる脂質スルファチドは、正常な神経活動に必須であり、アルツハイマー病の超早期に減少することが知られている。本研究では、老化促進モデルマウスを用いて、①脳内スルファチドの減少は脳の老化に関連するか、②スルファチド産生を促す食事由来成分は脳の老化を予防できるか、について検証する。本研究では、これらの実験を行うことにより、脳の老化に関する新しいメカニズムを明らかにし、早期に実行可能な認知症の予防法の開発に繋げることを目指している。 R3年度は、まず②の実験のための実験条件を検討した。私たちは、スルファチド産生を促す食事由来成分として短鎖脂肪酸を見いだしている。短鎖脂肪酸をC57BL6マウスに経口的に投与して、有効な投与量・投与期間・性別などの実験条件を検討した。その結果、本物質を投与した雄性マウスの全脳において、スルファチド合成酵素CSTのmRNA発現量の増加、及び、スルファチド含量の増加を確認した。これらの変化は統計学的に有意であったが、当初期待したものよりも弱かったため、より強いスルファチド増加作用を生じる実験条件を検討している。また、スルファチド増加作用に関して最も高い効果を得られる短鎖脂肪酸成分を特定し、その作用機序を示唆する実験結果をある程度得ることができた。また、研究分担者の協力により、老化促進マウスの長期飼育を行い、生体サンプルを回収した。経時的なスルファチド脳内変化の解析を準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症や研究室移転の影響、また諸般の事情により研究を一時中断せざるを得なかった。また、スルファチド分析に使用している本学共用施設のMALDI-TOFMS装置にトラブルが生じ、装置の様子をみながらの運用となった。新しい装置の購入は目途がたっておらず、これまでのスルファチド分析の代替法の検討を進めている。また、短鎖脂肪酸のマウスへの投与条件の検討に時間が必要であった。これらの影響から、実験計画は当初予定したよりもやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度は、まずR3年度に回収した老化促進マウスと同系統コントロールマウスの脳サンプルを用いた解析を行う。この実験では、加齢に伴い、脳内のスルファチド含量は減少するのか、それは脳内のどの領域でみられるのか、また、スルファチドの分子種組成に変化はあるか、について検討する。次に、これらのスルファチドの量的あるいは質的な変化が、神経細胞変性・アミロイド蓄積・過酸化物の蓄積といった加齢病変の出現や、認知機能の低下とどのように関連するか、について調査する。加えて、老化個体の血清サンプルを用いてスルファチド分析を行い、脳の老化を反映しうる血清スルファチド分子種を探索する。また、これらの実験と並行して、マウス脳内のスルファチド産生をより強く促す、短鎖脂肪酸の投与条件を決定する。その後、決定した実験条件に従って老化促進マウスへ短鎖脂肪酸を投与し、脳内スルファチド量は増加するか、老化抑制作用はみられるか、加齢病変の出現は抑えられるか、認知機能の低下は抑えられるか、などについて調査を行う。また、短鎖脂肪酸によるスルファチド増加作用のメカニズムに関する実験も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
上述した理由により実験計画に遅れが生じ、予定していたマウス等の消耗品の購入を延期したため、次年度使用額が生じた。次年度使用額はR4年度請求額とあわせて消耗品費として使用する予定である。
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