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2023 年度 実施状況報告書

アミノ酸代謝からひも解く癌患者のサルコペニア

研究課題

研究課題/領域番号 21K11619
研究機関岐阜大学

研究代表者

兼村 信宏  岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (50456498)

研究分担者 二宮 空暢  岐阜大学, 医学部, 招へい教員 (90444281)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワードサルコペニア / 造血器腫瘍 / 骨髄異形成症候群 / CONUT
研究実績の概要

造血器悪性腫瘍とサルコペニアの関連に関して、骨髄異形成症候群(MDS)における治療前のサルコペニアの状態が予後に相関するか検討した。53例のMDS患者に関して、azacytidine投与前に筋肉量を測定した。治療前のCT画像を用いて、第3腰椎レベルでの筋面積 (腹筋、大腰筋、傍脊柱筋)を身長で2回割った骨格筋指数を用いて筋肉量を評価した。男性で42cm2/m2、女性で38cm2/m2未満をサルコペニアと定義した。男性41例、女性12例、年齢中央値69歳(17-82歳)で検討した結果、27例がサルコペニアを有していた。Azacytidine治療後の生存期間中央値、奏功率、さらに非血液学的有害事象に関しては、サルコペニアの有無で差を認めなかった。しかし、貧血や血小板減少といった血液学的な有害事象に関してはサルコペニア合併例で有意に増加していた。 MDS患者における azacytidine治療において、サルコペニア合併例では血液学的毒性への注意が必要と考えられた。上記の結果を論文として、投稿し受理された。
一方、びまん性大細胞型Bリンパ腫患者(DLBCL)において、化学療法前の栄養状態が予後に及ぼす影響に関して検討した。末梢血中のリンパ球 数、コレステロール値、アルブミン値によって規定されるcontrolling nutritional status (CONUT) scoreを203名の65歳以上の高齢患者を対象に検討した。 CONUTスコアが3点以上(すなわち栄養不良)の症例には、有意に化学療法後の生存が低下することが判明した。これは、国際的な予後予測因子であるIPIに影響を受けることなく独立した予後予測因子であった。本研究成果も論文として報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

臨床データも用いた筋肉量や栄養状態と造血器腫瘍との予後との相関に関しては、順調に解析が進行しており、論文報告に至った。一方、基礎実験としては、当初計画していたアミノ酸欠乏培地を用いた骨格筋芽細胞(C2C12 myoblast cell)細胞増殖実験をXTTアッセイを用いて行った。また、分化培地を用いてC2C12細 胞の筋管形成実験を行い、筋細胞への分化、増殖にあたえる影響を検討し、その結果を報告した(Ninomiya et al. Nutrients 2020)。マウス実験でも、トリプト ファン欠乏食は有意に筋細胞の萎縮をきたし、通常食で萎縮した筋細胞の回復が得られることを確認した。今後は、担癌マウスでのアミノ酸とサルコペニアについて検討する予定であるが、まだ予定通りに進んでいない。実験内容は、SCIDマウスにRaji細胞(バーキッドリンパ腫)を投与し悪性リンパ腫モデルを作製する。このモデルを使い、餌中のアミノ酸を増加させることで、骨格筋の低下の予防や回復ができるかどうかを調ベる。さらに、その変化が生存率に影響を与える かどうか検討する。

今後の研究の推進方策

栄養状態の一つの指標である CONUTスコアが固形がんなどの予後予測因子になり得ることが提唱されているが、我々はperipheral T-cell lymphoma (PTCL)においてもCONUTスコアが予後予測 因子となることを報告した(Nakamura et al. Leukemia & Lymphoma 2021)。今回、高齢のDLBCL患者においても同様の結果が得られた(Kaneda et al. Leukemia & Lymphoma 2023)。今後はCONUTスコアなどの 栄養指標とサルコペニアを組み合わせて、造血器悪性腫瘍の新たな予後予測因子の開発に取り組む。特に高齢化が進む中、フレイルな患者割合がさらに増加することが予想され、frailtyの評価指標としてサルコペニアやCONUTを組み込んで評価する方法の開発が必要と考える。
また、基礎実験を通して、栄養不良状態やサルコペニアにある患者に対する栄養療法が予後改善につながるか検討するための基礎資料収集に努める。

次年度使用額が生じた理由

来年度より本格稼働するため、実験器具・試薬の購入費増加が予想される。従って翌年度への繰り越しが生じた。また成果発表の為、国際学会ならびに国内学会での発表旅費が考えられる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Impact of Skeletal Muscle Depletion on Patients with Myelodysplastic Syndrome Treated with Azacitidine2024

    • 著者名/発表者名
      Takada Eri、Nakamura Nobuhiko、Kaneda Yuto、Fukuno Kenji、Lee Shin、Fujita Kei、Morishita Tetsuji、Ikoma Yoshikazu、Matsumoto Takuro、Nakamura Hiroshi、Kitagawa Junichi、Kanemura Nobuhiro、Kasahara Senji、Hara Takeshi、Tsurumi Hisashi、Shimizu Masahito
    • 雑誌名

      Hematology Reports

      巻: 16 ページ: 114~124

    • DOI

      10.3390/hematolrep16010012

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The pretreatment Controlling Nutritional Status score is an independent prognostic factor in elderly patients with diffuse large B-cell lymphoma2023

    • 著者名/発表者名
      Kaneda Yuto、Kanemura Nobuhiro、Nakamura Nobuhiko、Ikoma Yoshikazu、Yamaguchi Kimihiro、Takada Eri、Shibata Yuhei、Lee Shin、Fujita Kei、Morishita Tetsuji、Matsumoto Takuro、Nakamura Hiroshi、Kitagawa Junichi、Kasahara Senji、Hara Takeshi、Tsurumi Hisashi、Shimizu Masahito
    • 雑誌名

      Leukemia & Lymphoma

      巻: 65 ページ: 339~345

    • DOI

      10.1080/10428194.2023.2295787

    • 査読あり
  • [学会発表] The pretreatment CONUT score is an independent prognostic factor in elderly patients with DLBCL.2023

    • 著者名/発表者名
      金田裕人、兼村信宏、中村信彦、生駒良和、山口公大、高田英里、松本拓郎、柴田悠平、中村博、二宮空暢、北川順一、笠原千嗣、原武志、鶴見寿、清水雅仁
    • 学会等名
      第85回日本血液学会学術集会
  • [学会発表] Prognostic Impact of Sarcopenia and Vitamin D in patients with DLBCL2023

    • 著者名/発表者名
      中村信彦、兼村信宏、島津諒磨、後藤貴之、金田裕人、生駒良和、松本拓郎、中村博、清水雅仁
    • 学会等名
      第85回日本血液学会学術集会

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公開日: 2024-12-25  

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