研究課題/領域番号 |
21K11622
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
臼井 真一 鳥取大学, 医学部, 教授 (50346417)
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研究分担者 |
篠畑 綾子 岡山大学, 保健学域, 助教 (70335587)
下廣 寿 鳥取大学, 医学部, 講師 (90583758)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | HDL / メタボリックシンドローム / 脂肪肝 / 肥満 / アポリポプロテインE |
研究実績の概要 |
メタボリックシンドローム(MetS)発症過程における血中アポE含有HDLの変動を経時的に追跡するために,8週齢で入手したラット(Sprague-Dawley)を高脂肪飼料(蛋白質24%,炭水化物41%,脂質21%,スクロース含有)で9週間飼育し,2週ごとに採血や血圧測定を実施した。コントロール飼料群と比較すると,高脂肪飼料群では体重が4週目から高値傾向にあったが統計学的に有意ではなかった。血圧は両群で差は見られなかった。血液生化学の項目では高脂肪飼料群で9週目の血糖値が高値,総胆汁酸濃度が低値であり,総コレステロール,トリグリセリド,リン脂質,遊離脂肪酸に差は見られなかった。アポE含有HDL濃度は2週目から経時的に増加する傾向がみられた。9週目の肝臓は高脂肪飼料による脂肪肝の発症は見られず,肝障害のマーカーである血清ALT,AST値もコントロール群と有意差がなかった。また,高コレステロール飼料を用いた予備実験では,アポE含有HDLが2週目で減少した。 以上の結果から今回の動物実験では,高脂肪飼料によりMetSの構成因子である高血糖は生じたが,肥満や高血圧を期待通りにラットに誘発することができなかった。その一方で,ラットを高脂肪飼料で飼育すると予想よりも早期の段階からアポE含有HDL濃度が上昇し始めることが明らかになった。アポE含有HDL濃度は,肥満,高血圧,高血糖などを発症する前から変動する可能性があり,その変動要因としては飼料組成が重要であることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験で予想通りのメタボリックシンドロームのモデルラットにならなかったが,アポE含有HDLの変動時期を確認できたため「順調」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトのMetSではアポE含有HDLが低下するため,アポE含有HDL濃度が早期に減少した高コレステロール飼料を使用した動物実験を進めていくことを考えている。アポE含有HDL濃度が変動する時期の臓器(肝臓等)を採取して,HDL代謝関連の蛋白質や遺伝子発現を解析予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響でマイクロピペットチップなどのプラスチック製品が予定通りに年度内に入手できなかったことや動物実験の開始時期がやや遅れたことにより,実験に必要な消耗物品等の費用に差異が生じた。令和3年度の未使用額は次年度分と合わせて,引き続き実施する動物実験や分析試薬の購入にあてる予定である。
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