研究課題/領域番号 |
21K11632
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研究機関 | 人間総合科学大学 |
研究代表者 |
平子 哲史 人間総合科学大学, 人間科学部, 准教授 (90644261)
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研究分担者 |
竹ノ谷 文子 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (30234412)
塩田 清二 湘南医療大学, 薬学部医療薬学科, 教授 (80102375)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | GALP / 糖代謝 / α-MSH |
研究実績の概要 |
GALPはブタ視床下部から単離同定された神経ペプチドである。GALPの発見以降、その生理作用についての様々な研究がなされており、脳室内投与により摂食量および体重の減少を引き起こすなど、GALPによる抗肥満効果が報告されている。本研究では肝臓と骨格筋におけるGALPの糖・脂質代謝調節作用を調べた。昨年度は、GALP投与により肝臓での解糖系が亢進し、糖新生が抑制させることを報告した。加えて、肝臓や骨格筋でのインスリン抵抗性を誘導することが知られているSeP、LECT2およびFetuin-A遺伝子発現が減少したことから、GALPはへパトカインを介して、糖代謝を制御する可能性をついて報告した。今年度は脳内でのGALPの作用経路について調べた。レプチンによる骨格筋への糖取り込みは、骨格筋β2アドレナリン受容体を介して生じる事が報告されている。GALPも交感神経の活性化により末梢での脂質代謝を亢進させていることから、交感神経を介して骨格筋への糖取り込みを亢進させる可能性がある。これまでに、GALPは脳内で交感神経活性化作用を有する神経ペプチドであるα-MSHと神経相関がある事がわかっている。そこで、本研究では、マウスにα-MSH受容体アンタゴニストを投与し、その後にGALP を投与したときの、肝臓および脂肪組織の糖・脂質代謝関連遺伝子発現を測定した。その結果、肝臓での脂肪酸β酸化に関連するCPT-1、MCAD、AOX遺伝子発現はいずれもGALP投与により増加したが、α-MSH受容体アンタゴニスト投与によって抑制された。UCP1遺伝子発現においても同様の結果となった。以上のことから、脳室内投与されたGALPは脳内でαMSH受容体を介して末梢臓器に作用していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GALPが糖代謝に関連するへパトカインであるSeP、LECT2およびFetuin-Aの遺伝子発現のみでなく、肝臓でのたんぱく質発現も増加させることを明らかにした。 また、GALPの脳内での作用経路について検討を行ったが、今回は脂質代謝に影響を与えた投与100分後の影響について検討した。本研究において、これまで解明されていなかったGALPが交感神経系を活性化させるメカニズムを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
GALPは投与後の経過時間によって利用するエネルギー基質を変化させることが示唆されている。投与直後については交感神経を介した脂質代謝の亢進作用を明らかにしたが、糖代謝に影響を与える投与12時間から16時間後の作用メカニズムについて検討する。また、GALP投与により、肝臓での糖新生が抑制されたが、その作用メカニズムとしてAMPKの関与について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続き、新型コロナウイルスの影響により共同研究者との研究が予定通りに進まなかった。本年度は、GALP投与後のメカニズム解明のため、リン酸化AMPK発現などをウエスタンブロット法により調べる。また、これまでの成果をまとめて英文誌への投稿や、国際学会への参加を予定している。
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