研究課題
ガラニン様ペプチド(GALP)は、1999年大瀧らによってブタ視床下部より単離同定された神経ペプチドである。中枢で作用したGALPは交感神経系を介して肝臓と白色脂肪組織での脂質代謝を亢進させる事が解明されている。また、先行研究によるGALP投与後の呼吸商を経時的に測定した結果から、GALPは投与後の経過時間によってエネルギー基質を変化させることが示唆されている。本研究では、呼吸商がsaline投与群と比較しGALP投与群で増加した16時間後における、肝臓と骨格筋におけるGALPにより糖代謝調節作用を調べた。昨年度までに、GALP投与により肝臓での糖新生に関連する遺伝子発現が減少し、加えて、インスリン抵抗性を誘導することが知られているへパトカインであるSeP、LECT2およびFetuin-Aの肝臓での遺伝子発現が減少したことを報告した。今年度はそれらのタンパク質発現および、それらの発現を制御しているAPMKの活性化を測定した。その結果、タンパク質発現も遺伝子発現と同様の結果となり、GALPにより糖新生は抑制、インスリン抵抗性を惹起するへパトカインのタンパク質発現が減少することが示唆された。また、肝臓のAMPKのリン酸化がGALPによって増加した。以上の結果から、GALPは肝臓のAPMKの活性化を介して、糖新生の抑制およびへパトカインの発現を抑制することが示唆された。続いて、骨格筋の糖代謝に関連する遺伝子発現を測定した。その結果、GALP投与により糖新生に関連するG6Pase遺伝子発現が減少し、糖取り込みに関与するGLUT4およびTCAサイクルに関連するPDHA1遺伝子発現が有意に増加した。以上の結果から、GALPは骨格筋での糖取り込みを促進させ、取り込んだ糖をエネルギー源として使用していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
GALPがインスリン抵抗性に関連するへパトカインであるSePおよびFetuin-A遺伝子発現およびタンパク質発現を減少させることを明らかにした。加えて、それらを負に制御しているAMPKが活性化していたことから、GALPはAMPKを介してそれらへパトカイン発現を制御していることが示唆された。また、骨格筋での糖利用が亢進することも明らかにした。
GALPが肝臓および骨格筋でも糖代謝に影響を与えることが示唆されたが、その詳細な作用およびメカニズムは十分解明できていない。今後は骨格筋を中心に、糖代謝関連酵素のタンパク質発現やAMPKのリン酸化等を測定することで、GALPの糖代謝への影響を解明する。
国際学会での成果報告で使用を予定していたが、想定していた研究成果が得られなかったため、旅費を次年度に使用することとした。次年度は、これまでの成果をまとめて英文誌への投稿や、国際学会への参加を予定している。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
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