研究課題/領域番号 |
21K11638
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
矢野 友啓 東洋大学, 食環境科学部, 教授 (50239828)
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研究分担者 |
加藤 和則 東洋大学, 理工学部, 教授 (60233780)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | NK細胞 / 前立腺がん幹細胞 / NKG2D / MICA/MICB / STAT3 / 殺細胞効果 |
研究実績の概要 |
今年度の研究目標は、昨年度確立したヒトNK細胞株(KHYG-1)とホルモン依存型前立腺がん幹細胞(LNCaP)の培養法を基に、NK細胞株とホルモン非依存型前立腺がん幹細胞(PC3)の培養法を構築し、NK細胞がホルモン依存型前立腺がん幹細胞に対する選択的殺細胞効果と同様の効果をホルモン非依存型前立腺がん幹細胞に対しても有しているかを、その殺細胞効果機序も含めて明らかにし、NK細胞の持つホルモン非依存型前立腺がん幹細胞に対する選択的な殺細胞効果に基づいた、ホルモン療法後の前立腺がん再発予防のリスク低減につながる新たな方法論の構築の可能性を探る。その結果、ホルモン非依存型前立腺がん幹細胞は親株に比べて、major histoconpatibiity gene complex class I-related chain A and B (MICA/MICB)の発現量が比較的高く、その受容体である殺細胞効果を示す活性化受容体NKG2DがNK細胞に比較的高発現していたことから、NKG2D/MICA/MICBシグナル伝達系が活性化され、この活性化がNK細胞株とホルモン非依存型前立腺がん幹細胞の相互作用の中で比較的高いレベルで起きたことが、NK細胞のよるホルモン非依存型前立腺がん幹細胞に対する選択的殺細胞効果に貢献していると推測できる。また、MICA/MICBの上流に位置する転写因子であるSTAT3の転写活性を抑制することで、ホルモン非依存型前立腺がん幹細胞におけるMICA/Bの発現レベルが有意に上昇したので、STAT3の転写活性を抑制することで、NK細胞のホルモン非依存型前立腺がん幹細胞に対する殺細胞効果を上昇させ、NK細胞による新たなホルモン療法後の前立腺がん再発予防の方法論の構築につながる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の目標はNK細胞を用いて、ホルモン療法後の前立腺がん再発の原因になるとされているホルモン非依存型前立腺がん幹細胞を除去できるかを、その機序も含めて明らかにし、NK細胞による新たな前立腺がん再発予防法構築の可能性を探ることであった。今年度の研究結果として、NK細胞が比較的特異的にホルモン非依存型前立腺がん幹細胞を除去し、その効果に寄与するシグナル伝達系としてNKG2D/MICA/MICB系を明らかにした。以上の結果を総括すると、当初の目的はほぼ達成できたと判断する。ただし、移転の関係で、最後の確認試験ができなかった点があり、その点が本年度のやや遅延している理由になる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に向けて以下の2点の研究を推進し、本研究プロジェクトをまとめる。1)ホルモン非依存性前立腺がん幹細胞に対するNK細胞の特異的殺細胞効果の標的シグナルを活性化できる機能性食素材をスクリーニングし、食品機能性食素材を用いた前立腺がん再発予防法の実用化の基礎を固める。2)臨床応用の可能性を高めるために、ヒトからNK細胞群を用いて、そのNK細胞を用いて、1)でスクリーニングした機能性食素材を用いた前立腺がん再発予防法の実現の可能性を確実なものにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新キャンパスへの移転準備等により、当初の予定より2か月早く研究を切り上げる状況になり、最後に予定していた最終確認試験が実施できずに、その分の経費が執行できなかった。また、学会出張を予定していたが、コロナ感染の広がりの影響で取りやめた。その結果、大幅な繰越金が生じた。最終年度には、最終確認試験と必要な学会に出席して、最新の情報を取集し、本研究プロジェクトの完結に役立てる。
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