昨年度までの検討で過去に確立したヒトNK細胞株(KHYG-1)とホルモン依存型前立腺がん幹細胞(LNCaP)の培養法を基に、NK細胞株とホルモン非依存型前立腺がん幹細胞(PC3)の培養法を構築し、NK細胞がホルモン依存型前立腺がん幹細胞に対する選択的殺細胞効果と同様の効果をホルモン非依存型前立腺がん(CRPC)幹細胞に対しても有していることを明らかにした。しかしながら、PC3はCRPC細胞の中でも悪性度(未分化度)が高く、幹細胞性の維持が難しく、再現性がとりづらい欠点があった。そこで、より分化度が高く、幹細胞性の維持が容易なCRPC細胞(DU145等)から安定した幹細胞性を有するがん幹様細胞を分離し、NK細胞の持つホルモン非依存型前立腺がん幹細胞に対する選択的な殺細胞効果に基づいた、ホルモン療法後の前立腺がん再発予防のリスク低減につながる新たな方法論の構築の可能性を探った。その結果、PC3の場合と同様に、ホルモン非依存型前立腺がん幹細胞は親株に比べて、major histoconpatibiity gene complex class I-related chain A and B (MICA/MICB)の発現量が比較的高く、その受容体である殺細胞効果を示す活性化受容体NKG2DがNK細胞に比較的高発現していたことから、NKG2D/MICA/MICBシグナル伝達系が活性化され、この活性化がNK細胞株とホルモン非依存型前立腺がん幹細胞の相互作用の中で比較的高いレベルで起きたことが、NK細胞によるホルモン非依存型前立腺がん幹細胞に対する選択的殺細胞効果に貢献していると推測でき、NK細胞による新たなホルモン療法後の前立腺がん再発予防の方法論の構築につながる可能性が示された。
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