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2022 年度 実施状況報告書

食塩過剰摂取がインスリン分泌不全を引き起こす機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K11645
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

高木 博史  名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (10792004)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード糖尿病 / 脂質 / 食塩 / 肥満症 / 膵β細胞
研究実績の概要

本研究課題においては、脂質摂取による膵島の増殖を食塩過剰摂取が抑制する機序を明らかにすることを目的に検討を進めている。候補となる機序として交感神経系の活性化の関与に着目し、病態改善に有効な薬剤を検討することを目指した。Sodium glucose cotransporter 2(SGLT2)阻害薬は、糖尿病薬として臨床応用されており、尿糖排泄促進に加えて交感神経系の活性化抑制作用が報告されている。8週齢C57BL6雄性マウスに塩化ナトリウム(NaCl)濃度4 %に調整した高脂肪高塩分食を8週間摂餌した群(HFHS群)と、高脂肪高塩分食6週間投与後にSGLT2阻害薬であるdapagliflozinを10 mg/kgの投与量となるように混合したdapagliflozin含有高脂肪高塩分食を2週間摂餌した群(HFHS+Da群)において、体重推移、摂餌量、尿量、尿中糖・ナトリウム排泄量を測定し、インスリン負荷試験(ITT)、腹腔内ブドウ糖負荷試験(IPGTT)、膵β細胞の面積測定を実施し両群間で比較した。その結果、HFHS群と比較してHFHS+Da群では摂餌量、尿量、尿中糖・ナトリウム排泄量の有意な増加を認めたが、体重に有意差は認めなかった。ITTでは両群間に有意差は認めなかった。HFHS群と比較してHFHS+Da群ではIPGTTでブドウ糖負荷後の血糖値の有意な低下とインスリン分泌指数の有意な上昇、免疫組織化学で膵β細胞面積・Ki67陽性細胞数の有意な増加、尿中アドレナリン・ノルアドレナリンの有意な低下、膵島内Thyrosine hydroxylase陽性面積の有意な低下を認めた。以上の結果、高脂肪高塩分食の摂餌による肥満糖尿病モデルマウスにおいて、dapagliflozinが耐糖能、インスリン分泌能を改善することが確認でき、その作用機序として交感神経系の活性化抑制が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画において、食塩過剰摂取が交感神経系の活性化を介して膵β細胞の増殖を抑制している可能性を想定して、各種薬剤や交感神経節切除などを用いて、高脂肪食群と高脂肪+高塩分食群の膵島の数・面積の変化、増殖の違いを検討することを予定し、本病態に有効な薬剤を見出すことを目指していた。本検討において、SGLT2阻害薬によって、交感神経活性化抑制、インスリン分泌能の改善、膵β細胞増殖作用が確認できたことは有意義であった。より詳細な機序に迫るための膵島における遺伝子発現の変化、交感神経説切除による解析などにはまだ着手できておらず今後の検討課題である。

今後の研究の推進方策

これまでの解析を背景に以下のような解析に着手することを検討している。本検討で病態形成に対する関与が示唆された交感神経活性化について、その機序のより詳細な検討を行う。脂質と食塩を過剰摂取するマウスモデルにおいて、肝など他の臓器におけるThyrosine hydroxylase発現などの差異を検討し、交感神経系活性化の関与の全身における影響を検討する。膵島を単離して遺伝子発現の差異を解析し、食塩過剰摂取によって特異的に発現が変化する遺伝子群の同定を目指す。膵島におけるα細胞の数の変化などを組織学的に解析する。SGLT2阻害薬による交感神経系活性化抑制の機序として中枢神経系の関与が報告されており、交感神経活性化調整に関与する部位の同定を目指す。交感神経活性化の関与を確認するために、交感神経節切除による変化の解析を検討する。高脂肪高塩分食を一定期間摂餌した後に普通食または高脂肪食のみに変更することで、減塩による体重の推移、耐糖能の変化を検証し、減塩療法の有用性について検討する。以上のような検討を進め、脂質摂取による膵島の増殖を食塩過剰摂取が抑制する機序に迫る。

次年度使用額が生じた理由

2022年度の解析は比較的順調に進んだと考えられた。2023年度に「研究の推進方策」で示したような、病態形成機序に迫るより詳細な解析に進展させる必要があったため、2023年度の使用額が生じた。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Dapagliflozinは脂質と食塩の過剰摂取によって生じる耐糖能異常を改善する2023

    • 著者名/発表者名
      廣瀬友矩、高木博史、久納光皓、佐々木智之、孫汝楠、杉山摩利子、坂野僚一、有馬寛
    • 学会等名
      第66回日本糖尿病学会年次学術集会

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公開日: 2023-12-25  

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