研究課題
ビタミンB12(B12)は必須栄養素であり,その欠乏によって悪性貧血が引き起こされる。一方で,その不足によって様々な神経疾患が惹起されることが報告されているが,その分子機構には不明な点が多い。その一例として,B12の処方が概日リズムの維持に有効であるとした報告や脳内におけるB12量が日内変動することが報告されている。しかしながら,その実態は未解明なままである。申請者はラット脳内B12の日内変動を検討した結果,既報と一定の整合性を有した結果を得ることができた。本研究において,脳内の補酵素型B12の動態を明らかにし,その睡眠覚醒における生物学的機能を明らかにすることを目的に,初年度はLCMS/MSを用いた補酵素型B12定量システムの構築を試みた。しかしながら,LCMS/MSを用いた補酵素型B12の同時定量法を開発したが,装置性能から脳内B12含有量を検討することは難しいことが明らかになった。そこで,LCMS/MSを用いた更なる検出感度の向上を検討したが,十分な感度を得ることはできなかった。一方で,検出感度が高い微生物法による検討を実施した結果,メチル基を上方配位子とする補酵素型B12が脳内において変動する結果を得た。また,B12欠乏状態における代謝変動を明らかにすることを目的にGCMS/MSによるメタボリックプロファイリング実験法を確立し,代謝変動の検討への適用を試み,欠乏時の代謝変動を明らかにすることができた。
3: やや遅れている
脳内補酵素型B12をLCMS/MSによって明らかにすることは,装置の検出感度から困難であると結論し,微生物法による検討に切り換え,補酵素型B12の変動を明らかにすることができた。
脳内における補酵素型B12の変動を検証した結果,メチルB12の変動を確認することができた。この結果はメチルB12が脳ならびに神経細胞において重要なファクターとして機能することを示唆するものである。そこで,代謝に及ぼす影響を明らかとするため,GCMS/MSによるメタボリックプロファイリングによる検討を実施する。そのため,B12欠乏動物を用いた検証実験を行い,期待される代謝変動の検出に成功した。また,動物において選択的にメチルB12量を変化させることは困難であるため,細胞を用いた検討を計画している。
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