肝星細胞の活性化過程におけるレチノイン酸受容体(RARα)の機能を明らかにするため、活性化肝星細胞の細胞質にスペックル状に局在するRARαと共局在する細胞小器官の探索を進めた。これまでにミトコンドリア、エンドソーム、リソソームとの共局在が見られないことを確認していたが、さらに他の細胞小器官との共局在を探索したところ、RARαと共局在する細胞小器官を見いだした。 原始的な脊椎動物であるヤツメウナギは、幼魚から成魚に至る変態期に、胆汁うっ滞による肝線維化を引き起こすが、変態期から成魚に至る発生過程で、肝線維化から回復し、正常な肝組織を取り戻す。これは、ヒトの胆道閉鎖症とそれによって引き起こされる肝硬変症が難病であることと対照的である。そこで、胆汁酸合成の律速酵素であるCyp7a1のcDNAをヤツメウナギからクローニングし、発現量の変化を測定した。その結果、成熟したオスのヤツメウナギにおいては、胆汁酸が、脂肪の吸収を助ける界面活性剤としてではなく、メスを引きつけるフェロモンとして働いている可能性を見いだした。 研究期間全体を通じ、ラットにおいて肝星細胞とクッパー細胞を個別に蛍光標識することに成功した。また、活性化肝星細胞でRARαと共局在する細胞小器官を見いだした。さらに、正常発生過程で一時的な胆汁うっ滞を起こすヤツメウナギにおいて、細胞毒性を持つ胆汁酸が巧妙に処理されるのみならず、シグナル分子として有効活用されている可能性を提示した。
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