本研究の目的は中枢神経系内のグリア細胞の一つであるオリゴデンドロサイトの多様な機能、特に代謝調節機構を明らかにすることである。研究代表者はこれまでに、絶食により、視床下部において血小板由来成長因子 PDGFの受容体である PDGFRαを発現するオリゴデンドロサイト前駆体細胞 (NG2グリア) が増殖すること、脳室内に PDGF を連続投与することにより肥満が惹起されることを明らかにしており、代謝調節にNG2グリアや PDGF が関与していると考えている。 今年度は、(1)本実験で用いる予定のAAV(AAV-mCherry-FLEX-dtA)のオリゴデンドロサイト前駆細胞への感染確認(免疫組織化学法によるPDGFRα免疫陽性細胞)に時間がかかってしまい計画通りに遂行できなかった。 そのため(2)および(3)の実験を遂行した。(2)脳内のグリア細胞を選択的に除去する餌を用いて、脳内のグリア細胞を除去し、体重・摂食量及び視床下部におけるタンパク質発現をウエスタンブロットにて検討した。その結果、グリア細胞のマーカー(Iba-1やPDGFRα)を用いた免疫染色またウエスタンブロットによる検討の結果、視床下部におけるグリア細胞数は有意に減少した。グリア細胞除去餌を給餌された群においてコントロール食給餌群と比較し摂食量の変化は認められなかったが、体重の有意な減少が認められた。 (3)脳内の軸索再生阻害因子Nogoや神経回路促進因子LOTUS系がレプチン投与によりどのように変化するかを検討した。ウエスタンブロット法による解析の結果、視床下部のNogo-Aはレプチン投与により有意に発現が増加した。
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