研究課題/領域番号 |
21K11660
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研究機関 | 松本大学 |
研究代表者 |
山田 一哉 松本大学, 大学院 健康科学研究科, 教授 (20263238)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | SHARPファミリー / 糖新生 / PEPCK / 遺伝子発現 / cAMP |
研究実績の概要 |
本研究では脂肪細胞において、SHARPファミリー時計遺伝子や糖新生系酵素PEPCKをコードしている遺伝子の発現がどのように制御されているかについて検討した。 はじめに、3T3-L1 脂肪細胞を cAMP シグナル系に関わる Adenylate cyclase の活性化剤である Forskolin で 2 時間処理したところ、PEPCK 遺伝子の発現は上昇した。一方、SHARP-1 mRNA の発現は低下し、SHARP-2 mRNA の発現は上昇した。次に、これらの発現調節がセカンドメッセンジャーの cAMP により制御されているかどうかを検討するために、脂肪細胞を 8-Br-cAMP で 2 時間処理した。その結果、Forskolin と同様の結果が得られた。さらに、Forskolin によるこれら遺伝子の発現調節が遺伝子の転写レベルで制御されているかどうかを検討するために、脂肪細胞をRNA polymerase II の阻害剤である actinomycin Dで処理したところ、Forskolin による遺伝子発現調節はすべて阻害された。次に、この転写調節に新規タンパク質の合成が必要かどうかを検討するために翻訳阻害剤で処理したところ、PEPCK と SHARP-1 遺伝子の発現は阻害されなかったが、SHARP-2 遺伝子の発現は阻害された。最後に、Forskolin の作用に対して Insulin がどのように作用するか検討したところ、PEPCK とSHARP-1 では両者の効果が拮抗すること、SHARP-2 では両者の効果が増強されることが明らかになった。 これらの結果から、検討した糖代謝調節遺伝子には脂肪細胞特異的な調節機構が存在すること、脂肪細胞では肝臓の場合とは異なりSHARP-1 のみが PEPCK 遺伝子の発現と負の相関関係を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症拡大下で研究活動に一部制限があったものの、おおむね順調に進展している。ただ、最近になって様々な試薬・消耗品等が海外からすぐに手に入りにくくなってきたため、今後は少し遅延することがあるかもしれない。そうならないように少し在庫を抱えるぐらいの気持ちで注文していくつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、脂肪細胞での研究を深めていくことと並行して、当初の計画通りに他のインスリン応答性組織であるC2C12筋管細胞での遺伝子発現調節機構を解析していくことに集中する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度研究に用いる培養細胞を径6cmシャーレの培養系から径3.5cmシャーレの培養系に変更した。これに伴い、培養に関わる血清や培地等のすべての試薬の使用量、ならびに、サンプル調製に用いる試薬・器具等の使用量も大いに削減することができた。そこで、予定していた高額な血清の購入を避けることができた。また、京都で開催される予定であった日本生化学会大会もオンライン開催となったため、旅費等も使用しなかった。加えて、2022年1月26日から3月6日まで長野県で発令されていた「まん延防止等重点措置法」により、研究活動に一部制限が加えられたため、使用額が減少し、次年度へ持ち越すことになった。
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