研究実績の概要 |
本研究の目的は過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome, 以下IBS)症状を持つ大学生を対象に、その運動機能や関連する心理的因子、実際のバランス能力、腸内細菌叢との関わりを明らかにすることにある。IBSは腹痛や腹部不快感、便通異常を特徴とする機能的疾患である。ストレス関連疾患の最たるものであり、うつや不安などの心理的異常も多く、著しくquality of life(生活の質)や社会機能を障害するため、その病態の解析や運動の影響を解明することは社会的意義が大きい。 1475名の大学生に研究説明を行い、703名から回答を得た。そのうち、IBS有症状者は184名であった。IBS有症状者かつ運動経験が少ない者は、IBS無症状者かつ運動経験が豊富な者に比べて、マインドフルネス傾向やストレス知覚、身体活動量が有意に悪化した。またマインドフルネス傾向によって、身体活動量が腹部に与える影響が変化することが判明した。加えてIBS群26名とHC群27名を抽出し、実際のバランス能力を測定し、腸内細菌叢検査を実施した。その結果、バランス能力に有意な群間差は見られなかったが、バランス能力が低く失感情症傾向が高い群は、バランス能力が高く失感情症傾向が低い群に対して、有意に腹部症状が悪化していた。また腸内細菌Bacteroides caccaeはIBS群において腹部症状悪化ならびにバランス能力低下に有意に相関がみられていた。今年度は日本神経理学療法学会や日本大腸肛門病学会にて発表を行った。 本研究のバランス能力と腹部症状の関連性、ならびに腸内細菌とバランス能力の影響については今後、論文投稿予定である。
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