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2021 年度 実施状況報告書

心不全パンデミックの予防を目指した高齢者心疾患に関わる糖鎖関連因子の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K11666
研究機関地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)

研究代表者

板倉 陽子  地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30582746)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード糖鎖プロファイル / 心臓 / 老化 / 心疾患 / 心不全
研究実績の概要

急速な高齢化に伴い心不全の罹患率は著しく増加し、近い将来心不全パンデミックが到来すると予測される。特に高齢者においては慢性的な心不全の繰り返しが悪化を促進させるため、軽度なうちに適切な治療を受けることが重要である。しかし、心不全は様々な要因に起因するため、原因や発症機序を明確にすること、効果的な薬を判断することは難しい。また、心疾患によりもたらされる心不全は性別や年齢により異なることも知られている。そのため、まずは心臓の状態を詳細に検討し、性別や年齢を考慮した組織の特徴を把握することが重要である。
本研究では、病態が細胞群の加齢に伴う量的・質的変化の多様性を反映した結果と捉え、糖鎖に焦点を当てた心臓組織の変化に着目し、高齢心不全患者の検体を用いた心臓の質的変化を捉えるための特徴的分子の検出を目指す。そして、糖鎖ならびに糖タンパク質の動態とその機序を明らかにすることを目的としている。そのために、レクチンマイクロアレイ法や組織染色を用いた心臓検体における糖鎖情報の取得に加え、加齢および疾患に関わる糖タンパク質発現情報の取得を実施する。さらに、病態、年齢、性別などを考慮した網羅的な比較を実施する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和3年度は高齢心不全患者の糖鎖情報の取得を目的とし、細胞ごとの糖鎖および組織の状態を検討した。心臓を構成する各細胞の糖鎖特異性を把握するために、まずはヒト心臓由来培養細胞における糖鎖プロファイルを取得し、細胞老化に伴う変化を明確にした。また、各種細胞において特異的に得られた糖鎖を指標に、すでにマウス心臓において加齢変化の認められた糖鎖および各種細胞マーカーなどによる組織染色を一部の心疾患患者検体において実施した。疾患と組織変化の関係性を把握するため、心疾患の状態、年齢、性別、線維化領域・程度などを考慮し複数の心疾患検体を選定した。現在、高齢心不全患者の心臓特異的な糖鎖プロファイルデータの取得と、組織変化についてさらなる検討を行ってる。以上より、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」と考えられる。

今後の研究の推進方策

培養細胞および動物実験から既に得られた情報をもとに、心疾患患者の心臓組織の状態を把握するための詳細な検討を行う。まずは心筋梗塞と診断された患者検体における糖鎖情報を取得するために、糖鎖プロファイルデータの蓄積、組織染色による糖鎖発現領域の観察を実施し、心筋梗塞時の高齢患者における心臓が細胞レベルでどのような状態にあるかを検討する。そして、線維化の発症領域および糖鎖等の特徴的な分子の発現分布に加え、遺伝子・タンパク質発現情報を解析することで、分子レベル・組織レベルでの細胞の老化ならびに病態に伴う分子変化の状態を検討する。また、加齢変化と病態との関連性を調べるために世代の異なる患者ならびに心臓以外を要因とする患者の検体に対して、組織染色を行い、組織学的な分類と疾患特異性を検証する。

次年度使用額が生じた理由

成果報告のために参加を予定していた学会にオンラインで参加したため、旅費に関わる費用が発生しなかった。そのため、旅費として計上していた費用が残予算として生じた。
前年度に得られた結果をもとに切片の染色実験ならびに分子の発現解析など詳細な検討を実施するため、残予算は抗体やレクチン、スライドガラスなどの試薬および消耗品の購入に使用する。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Tissue Glycome Mapping: Lectin Microarray-Based Differential Glycomic Analysis of Formalin-Fixed Paraffin-Embedded Tissue Sections2022

    • 著者名/発表者名
      Nagai-Okatani Chiaki、Zou Xia、Matsuda Atsushi、Itakura Yoko、Toyoda Masashi、Zhang Yan、Kuno Atsushi
    • 雑誌名

      Methods in Molecular Biology

      巻: 2460 ページ: 161~180

    • DOI

      10.1007/978-1-0716-2148-6_10

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Glycan characteristics of human heart constituent cells maintaining organ function: relatively stable glycan profiles in cellular senescence2021

    • 著者名/発表者名
      Itakura Yoko、Sasaki Norihiko、Toyoda Masashi
    • 雑誌名

      Biogerontology

      巻: 22 ページ: 623~637

    • DOI

      10.1007/s10522-021-09940-z

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Cell Surface and Functional Features of Cortical Bone Stem Cells2021

    • 著者名/発表者名
      Sasaki Norihiko、Itakura Yoko、Mohsin Sadia、Ishigami Tomoaki、Kubo Hajime、Chiba Yumi
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 22 ページ: 11849~11849

    • DOI

      10.3390/ijms222111849

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] レクチンマイクロアレイ法を用いたマウス心臓の加齢に伴う糖鎖変化と局在に関する比較解析2021

    • 著者名/発表者名
      板倉 陽子、佐々木 紀彦、豊田 雅士
    • 学会等名
      第94回日本生化学会大会
  • [学会発表] 心臓構成細胞における細胞老化と糖鎖特異性に関する基礎的解析2021

    • 著者名/発表者名
      板倉 陽子、佐々木 紀彦、豊田 雅士
    • 学会等名
      CVMW2021第29回日本血管生物医学会学術集会(JVBMO)
  • [学会発表] 性染色体がコードするヒストン脱メチル化酵素KDM5CとKDM5Dのマウス胚発生における機能的差異と相同性2021

    • 著者名/発表者名
      永田 圭、小杉 真由子、大谷 舞衣、池田 優美、吉川 友里香、板倉 陽子、豊田 雅士、関田 洋一、木村 透
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] ヒト血管平滑筋細胞の形質転換とガングリオシド2021

    • 著者名/発表者名
      佐々木 紀彦、平野 和巳、志智 優樹、板倉 陽子、石渡 俊行、豊田 雅士
    • 学会等名
      CVMW2021第29回日本血管生物医学会学術集会(JVBMO)
  • [学会発表] Cellular senescence is additively induced in pancreatic cancer cell by FGFR4 inhibitor BLU99312021

    • 著者名/発表者名
      Norihiko Sasaki, Fujiya Gomi, Hisashi Yoshimura, Masami Yamamoto, Yoko Matsuda, Masaki Michishita, Hitoshi Hatakeyama, Yoichi Kawano, Yoko Itakura, Masashi Toyoda, Murray Korc, Toshiyuki Ishiwata
    • 学会等名
      第80回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] FGFR4シグナル抑制による膵癌の老化誘導と、老化細胞死誘導薬の有効性2021

    • 著者名/発表者名
      佐々木 紀彦、五味 不二也、吉村 久志、山本 昌美、松田 陽子、道下 正貴、 畠山 仁、川野 陽一、板倉 陽子、豊田 雅士、マレーコーク、石渡 俊行
    • 学会等名
      第52回日本膵臓学会大会
  • [学会発表] FGFR4 inhibitor BLU9931 additively induces cellular senescence in pancreatic cancer cell for senolytic therapy2021

    • 著者名/発表者名
      Norihiko Sasaki, Fujiya Gomi, Hisashi Yoshimura, Masami Yamamoto, Yoko Matsuda, Masaki Michishita, Hitoshi Hatakeyama, Yoichi Kawano, Yoko Itakura, Masashi Toyoda, Murray Korc, Toshiyuki Ishiwata
    • 学会等名
      The American Association for Cancer Research Annual Meeting 2021
    • 国際学会
  • [備考] 臓器としての機能を維持し続けるヒト心臓構成細胞の糖鎖の特徴は細胞が老化しても保持されている

    • URL

      https://www.tmghig.jp/research/release/2021/1111.html

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公開日: 2022-12-28  

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