研究課題/領域番号 |
21K11668
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山縣 憲司 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00420084)
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研究分担者 |
鈴木 英雄 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00400672)
内田 文彦 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70736008)
岡田 浩介 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80757526)
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 客員教授 (90241827)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | NASH / 歯周病菌 / Oral-Gut-Liver axis / Nrf2 / 遺伝子改変マウス |
研究実績の概要 |
歯周病原菌のリポ多糖(LPS)は,腸肝連関を介してNASHの発症進展に関与する.酸化ストレス防御の司令塔Nrf2がNASHを防御することを報告したが,Nrf2は肝細胞における酸化ストレス消去のほか,小腸のバリア機能,Kupffer細胞の貪食能にも重要な役割を果たす.Nrf2は,P.gとそのLPSに対しても防御機能を果たすことが推測されるが,全身Nrf2遺伝子欠失マウス(Nrf2-KO)を用いた解析では,組織細胞ごとのNrf2の機能解明は困難である.本研究は,Kupffer細胞を含むマクロファージのみにNrf2を発現するマクロファージ特異的Nrf2遺伝子レスキューマウス(Nrf2 m-res)を作製・解析し,歯周病原菌のLPSが誘導するNASHにおけるマクロファージのNrf2の役割を明らかにすることを目的とする. Nrf2 m-resをCre-loxPシステムを用いて作製した.雄性5週齢のNrf2-KO,Nrf2 m-res,野生型マウス(WT)に高脂肪食を17週間摂餌させ,後半6週間にP.g 由来LPS(0.3mg/kg)を週2回腹腔内投与してNASHを誘導した.23週齢でと殺し,体組成,肝病理評価,肝組織qPCRによりNASH病態を比較解析した. Nrf2-KOはWTと比べ肝炎症および線維化が有意に高度であったが,Nrf2 m-resではそれらが改善した.肝組織のqPCR解析でも,Nrf2-KOはWTと比べ炎症性サイトカインIl-1β,Tlr2と肝線維化促進因子Tgfβ1の発現が有意に増加したが,Nrf2 m-resでは減少する傾向が認められた. Kupffer細胞を含むマクロファージのNrf2は,当該NASHモデルの肝炎症と線維化の進行を抑止した.歯周病原菌由来のLPSが誘導するNASHの進展において,マクロファージのNrf2は重要な防御因子と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高脂肪食摂餌とP.g 菌由来LPS投与によるNASHモデルにおいて,Nrf2の欠失は肥満とインスリン抵抗性を介さずにNASHの炎症線維化を悪化させた.歯周病原菌を原因とするNASHにおいてNrf2は防御的に機能し,新規治療標的と成り得ると考えられた.
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今後の研究の推進方策 |
Nrf2-KOをベースに作製したKupffer細胞を含むマクロファージのみにNrf2を発現するマクロファージ特異的Nrf2遺伝子レスキューマウス(Nrf2 m-res)では,NASHの表現型が改善することが判明した.今後は,マクロファージにおけるNrf2の果たす役割に着目して,臓器特異的なNrf2の役割解析を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究試薬の納品が遅延したため.
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