植物性食品成分の多くは植物中では配糖体として存在しており、摂取した配糖体は小腸や大腸で代謝変換を受け生体内では代謝物として存在している。そのため、それらの有効性は抱合代謝物や分解代謝物の寄与が考えられるが、多くの抱合/分解代謝物の生理活性は不明である。加えて、食品成分の生体利用性は、食品の単独摂取と日常的な食生活の形態である複数同時摂取で異なる。しかしながら、複数同時摂取でのそれらの代謝変化を評価した報告はない。そこで本申請研究では、植物性食品成分の複数同時摂取がそれらの生体利用性に及ぼす影響を検討するとともに、食品成分の代謝変換物の機能性を評価する。これらの研究を通して、機能性食品成分の実質的な有効性を評価し、健康増進・維持への貢献を目指す。 本年度は、(1)ケルセチンと食品成分の同時摂取がケルセチンの吸収に及ぼす影響を再評価した。その結果、昨年度同様、他成分との同時摂取により血中へのケルセチン吸収量に変化が見られた。また、ケルセチン抱合代謝物を分析したところ、それぞれの吸収量に依存してケルセチン代謝物量も変化したが、そのパターンに差は見られなかった。(2)ケルセチン代謝物による抗酸化酵素Heme oxygenase-1(HO-1)の遺伝子発現上昇機構を確認した。その結果、アグリコン同様、Nrf2経路の関与が示唆された。(3)ケルセチンの類似構造を有するフラボノイド類の生体内への吸収量を評価した。その結果、僅かな構造の違いにより生体利用性が異なることが示唆された。
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