研究課題/領域番号 |
21K11682
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
早川 盛禎 自治医科大学, 医学部, 講師 (30326847)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | NAFLD / VWF / FVIII |
研究実績の概要 |
本年度は、高脂肪食負荷によるNAFLDモデルマウスを作製し、VWFとその結合パートナーである血液凝固VIII因子(FVIII)の発現、および凝固活性の変動を明らかにすることを目的とした。C57BL/6J系統の野生型オスマウスに対して、標準食(NCD)または高脂肪食(コリン欠乏メチオニン減量高脂肪飼料;CDAHFD)を12週間給餌した。給餌開始前と給餌後2週間毎に採血し、血漿中のVWFのタンパク質発現、およびFVIIIの凝固活性を測定した。CDAHFD群におけるVWFのタンパク質発現は、給餌開始前と比べて僅かな増加が認められた。また、FVIIIの凝固活性は給餌開始前と比べて4週後までに2.5倍に上昇し、その後も高活性の状態が維持された。給餌12週間後、NCD群とCDAHFD群の臓器における遺伝子発現の変動を調べたところ、VWFの遺伝子(Vwf)発現はCDAHFD群の肝臓のみに増加が認められた。一方、FVIIIの遺伝子(F8)発現は両群のいずれの臓器でも変動がなかった。血漿中において、VWFと結合したFVIIIはプロテアーゼ分解を受けにくいことが知られている。このことから、NAFLDモデルマウスにヒトFVIIIを静注し、血漿中の残存時間を検討したところ、CDAHFD群のヒトFVIIIはNCD群に比べて長く残存することが明らかになった。これらの結果から、CDAHFD群ではVWF発現増加により血漿中のFVIIIの安定性が向上し、FVIII凝固活性が上昇することが示唆された。また、NCD群とCDAHFD群の肝臓からセルソーターによりVWFおよびFVIII発現細胞である肝類洞内皮細胞(LSEC)を単離した。今後、LSECにおけるプロテオーム解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NAFLDモデルマウス作製後、セルソーターによる細胞分離の条件設定に時間を要したため目的細胞であるLSECの単離は完了したが、当初予定していたプロテオーム解析は実施できていない。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、NAFLDモデルマウスのCDAHFD群におけるVwf増加の発現制御を明らかにする。Vwfプロモーターを挿入したルシフェラーゼ発現アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを導入したマウスにてNAFLDモデルを作製し、Vwf発現増加に関与するプロモーター領域および転写因子を検討する。第二に、NASH診断に有用な血液マーカーを見出す。現在、NASHの鑑別診断には肝生検が必須であるため、採血サンプルで診断可能な血液マーカーが切望されている。本研究ではVWFとFVIII発現細胞であるLSECを対象としたプロテオーム解析により、分泌タンパク質や逸脱酵素などの血液マーカー候補を選抜する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額分は、2021年度に予定していたプロテオーム解析を2022年度に実施するために使用する。具体的には、昨年度までに単離したNCD群とCDAHFD群のLSECからタンパク質を抽出し、二次元電気泳動にて展開後、質量分析装置によりCDAHFD群に特異的なタンパク質を同定する。その後、対象タンパク質について血漿中の発現変動を検討する。
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