研究課題
高脂肪食摂取、座りがちな生活、すなわち悪い生活習慣が健康に悪影響を及ぼすことは古代よりいわれてきており、節制や運動の推奨がなされてきている。身体不活動や高脂肪食は骨格筋に対してメタボリックシンドロームや2型糖尿病の最も重要な病態であるインスリン抵抗性を惹起するだけでなく、骨格筋の量を減少させることが示唆されている。そのため、不活動や高脂肪食により生じる、骨格筋のインスリン抵抗性と萎縮は、共通の病態基盤を持っている可能性がある。これまで我々は、高脂肪食+不活動によるフォスファチジン酸脱リン酸化酵素(Lipin1)発現量と活性の増加が、骨格筋のインスリン感受性と骨格筋量を同時に、相加的に低下させうる重要な鍵分子であることを示すデータを得た。これに対して、Lipin1の骨格筋量への影響をin vitroで確認するために、C2C12マウス筋管細胞に対して野生型Lipin1-wt、核内以降シグナルを置換した異性体であるLipin1-9Aを過剰発現させ、筋萎縮関連遺伝子(Atrogin1, Murf1, myostatin)の発現量をmRNAで確認した結果、Lipin1-wtではAtrogin1, MuRF1では発現量に変化が見られなかったものの、Myostatin発現量がLipin1ーwt過剰発現で約4.5倍に増加していたのに対し、Lipin1-9AではMyostatinの発現量の増加が認められなかった。Myostatinは骨格筋などより分泌される液性因子で骨格筋にオートクライン、パラクラインに作用する因子で、高齢期の筋萎縮の原因であるともいわれる。本結果より、Lipin1が骨格筋萎縮に関連する可能性が示唆された
3: やや遅れている
本研究計画に記載した動物を使用した実験について、疫病の影響によって規模を縮小していた影響があり少し当初の計画より遅れている。
研究環境も十分元に戻ってきているため、当初の計画通り研究を進めていく。具体的には、Lipin1の筋力への影響を確認するためにin vivo, in vitroでのCa2動態の確認と筋力の測定を行う。また、エピゲノムの影響を探るため、DNAメチル化の解析を行っていく。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件)
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