研究課題/領域番号 |
21K11686
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
小原 圭将 東邦大学, 薬学部, 講師 (90637422)
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研究分担者 |
田中 芳夫 東邦大学, 薬学部, 教授 (60188349)
吉岡 健人 東邦大学, 薬学部, 助教 (50758232)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | γ-リノレン酸(GLA) / α-リノレン酸(ALA) / プロスタノイドTP受容体 |
研究実績の概要 |
本研究では、下部泌尿器平滑筋の収縮機能異常に対する植物油に含有される成分であるγ-リノレン酸(GLA)の抑制効果の背景にある分子基盤の解明することを目的として、下部尿路組織に対するGLAの影響を検討するとともに、その効果をGLAの構造異性体であるα-リノレン酸(ALA)の効果と比較した。その結果、GLAとALAは共に、ラット精管標本において、脱分極性収縮反応に対しては強力な抑制効果を示さないものの、アデノシン三リン酸(ATP)及びノルアドレナリン(NA)により誘発される収縮反応を強力に抑制することを見出した。また、モルモット胸部大動脈標本においてもGLA、ALAの抑制効果を検討したところ、脱分極性収縮反応に対しては強力な抑制効果を示さないという性質は精管標本と共通であったが、本組織ではアドレナリンα1受容体刺激薬であるフェニレフリンによる収縮反応に対してもGLA、ALAは強力な抑制効果を示さなかった。一方、モルモット胸部大動脈標本では、GLA、ALAは共に、プロスタノイドTP受容体刺激薬であるU46619による収縮反応を強力に抑制することが明らかとなった。GLA、ALAがTP受容体を強力に抑制するという性質は、当教室でこれまで明らかにしてきたドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)などの魚油に含有される多価不飽和脂肪酸と同様の性質であったことから、当初の予定とは異なるが、ブタ冠動脈及び脳底動脈に対するGLA、ALAの効果を検討したところ、これらの脂肪酸はDHAやEPAと同様に、ブタ冠動脈及び脳底動脈においても脱分極性収縮反応には影響を与えずに、U46619による収縮反応を強力に抑制することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は下部尿路平滑筋を中心に検討を行う予定であったが、γ-リノレン酸(GLA)やその構造異性体であるα-リノレン酸(ALA)にプロスタノイドTP受容体に対する拮抗作用を有する可能性が見出されたことから、研究を内容を一部修正することとしたが、非常に興味深い新たな知見が得られているため、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
下部尿路平滑筋に対するGLA、ALAの効果を検討するとともに、ブタ冠動脈及び脳底動脈などの血管平滑筋に対するこれらの脂肪酸の抑制効果についてより詳細に検討することを予定としている。また、各種プロスタノイド受容体を強制発現させた細胞を用いることにより、これらの脂肪酸の抑制効果のメカニズムをより詳細に検討していく予定である。
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