研究課題
本研究では、下部泌尿器平滑筋の収縮機能異常に対する植物油に含有される成分であるγ-リノレン酸(GLA)の抑制効果の背景にある分子基盤の解明することを目的として、下部尿路組織に対するGLAの影響を検討するとともに、その他の平滑筋に対するGLAの効果を検討することとした。ラット精管標本におけるGLAの影響を再評価したところ、脱分極性収縮反応を強力ではないものの、ドコサヘキサエン酸(DHA)よりも強力に抑制することが明らかとなった。モルモット腸管平滑筋においても、再度、GLAの影響を再評価したところ、脱分極性収縮反応を抑制することが明らかとなった。なお、腸管平滑筋においては、GLAはアセチルコリンやヒスタミンによる収縮反応に対しても抑制効果を示した。また、この抑制は特定のカチオンチャネルを抑制する薬物を存在させた状態でも観察できたため、少なくとも電位依存性Ca2+チャネルやその下流に存在する情報伝達系がGLAのターゲットであるのではないかと考えている。さらに、ブタ冠動脈平滑筋において、各種収縮反応に対するGLAの影響とGLAの構造異性体であるα-リノレン酸(ALA)の影響を評価しており、様々な収縮反応に対するこれらの脂肪酸の効果を検討しているところである。これらの脂肪酸いずれもプロスタノイドTP受容体に対する拮抗効果を示す可能性が示されており、この点について、詳細な吟味を行っている最中である。また、ブタ脳底動脈平滑筋・モルモット胸部大動脈平滑筋の収縮反応に対するALAの効果も検討しており、ブタ冠動脈平滑筋で得られた性質が、血管平滑筋に普遍的なものであるかについても検証を行っているところである。
2: おおむね順調に進展している
当初は、下部尿路平滑筋を中心に検討を行う予定であったが、1)血管平滑筋においてγ-リノレン酸(GLA)やその構造異性体であるα-リノレン酸(ALA)にプロスタノイドTP受容体に対する拮抗作用を有する可能性が見出されたこと、2)腸管平滑筋でも興味深い結果が得られたことから、研究を内容を一部修正することとしたが、興味深い知見が得らえれているため、おおむね順調に進展していると評価した。
下部尿路平滑筋に対するGLAの効果を検討するとともに、ブタ冠動脈及び脳底動脈などの血管平滑筋に対するGLA・ALAの抑制効果についてより詳細に検討することを予定としている。また、腸管平滑筋に対するGLAの効果についても引き続き検討を行っていく予定である。
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Pharmacology Research & Perspectives
巻: 10 ページ: e00952
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Scientific Reports
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https://www.toho-u.ac.jp/press/2022_index/20220816-1223.html
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