研究実績の概要 |
超高齢社会を迎えた日本において、サルコペニアの早期発見と治療介入が必要と考えられている。サルコペニアの診断には骨格筋の量だけでなく、骨格筋の質(以下、筋質)を評価することが重要であるが、現在のところ、筋質の評価方法は確立されていない。 本研究では、健常者コホート(①高齢健常者、②若年健常者)を用いて、生体電気インピーダンス法によって得られるPhase Angleの基準値を算出し、健常者においてPhase Angleが筋質の評価指標として有用であること、さらにPhase Angle単独でサルコペニアを診断できる可能性とそのカットオフ値を示した。また、肥満患者を対象として、腹囲と筋質で定義したサルコペニア肥満は、年齢、性別調整下においても有意に脳心血管病リスク重積と関連することを示した。7つ肥満評価指標(BMI, PBF, WC, WHpR, WHtR, BRI, ABSI)について比較検討を行ったところ、ABSI(A Body Shape Index)のみが、糖尿病、高血圧、脂質異常症の2つ以上の合併を予測し、四肢骨格筋量や筋力、筋質と負に相関することを明らかにした。このことから、ABSIは単独でサルコペニア肥満の診断指標として有用である可能性が考えられた。若年健常者コホートを用いた検討において、骨格筋量や筋力は摂取カロリーや身体活動度と関連することが明らかとなり、若年時から適切なカロリー摂取、運動習慣の重要性を示した。さらに、若年者の中には男女ともに隠れ肥満(正常体重肥満)者が約4-8%程度の存在することが分かり、これらの隠れ肥満者では四肢骨格筋指数や握力、Phase Angleが有意に低下していることを示した。サルコペニア肥満においても、筋肉内への脂肪浸潤や線維化が進み、筋質、Phase Angleが低下していることが予想された。
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