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2022 年度 実施状況報告書

定常状態下の細胞でNAD+を分解している酵素の同定とNAD+濃度調節機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K11696
研究機関島根大学

研究代表者

原 伸正  島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 講師 (20284028)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードNAD+代謝 / ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ / サーチュイン / 老化
研究実績の概要

年齢が高くなるほど認知症、ガン、動脈硬化、糖尿病などの病気を持つ人が多くなる。これら加齢性疾患がさまざまな臓器のNAD+レベルの減少と関連があり、NAD+レベルを増加させ、長寿に関わるとされるNAD+依存性脱アセチル化酵素サーチュイン(SIRT)を活性化することがこれら疾患の予防および治療に有益であると考えられている。定常状態においてNAD+は連続的に合成され分解されているので、NAD+濃度調節機序の理解には、その合成と分解の速度の測定が必須である。定常状態下の細胞における連続的なNAD+ の分解を担う酵素は未だに明らかになっていない。本研究では、候補とされる分解酵素の発現を増減させ、NAD+合成・分解速度、NAD+濃度を測定することで、定常状態のNAD+ 濃度を制御しているNAD+分解酵素を同定し、NAD+濃度調節の機序を明らかにする。NAD+分解酵素候補として提唱されている酵素にはポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ-1(PARP-1)、 PARP-2、 SIRT1、SARM1、CD38などがある。遺伝子編集によりPARP-1、PARP-2、SIRT1、SARM1を欠損した細胞を作成し、これらが定常状態のNAD+分解に有意に関与しないことを見出している。さらに、本研究で用いる細胞ではCD38遺伝子の発現が極めて少なくこの候補酵素の関与は大きくないと推定された。令和4年度では、令和3年度に作成したCD38を安定に発現する細胞を用いて、CD38の定常状態でのNAD+分解への関与を解析した。CD38の発現もNAD+分解速度を増加させず、この酵素が定常状態のNAD+分解に有意に関与しないことが示唆された。今後のNAD+分解酵素の同定により、この酵素を標的にNAD+濃度を増加させSIRTを活性化することが可能となり、従って加齢性疾患の予防および治療につながるものと期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初、文献に従いNAD+分解酵素としてPARP-1を想定していたが、予想に反して、本酵素の発現をなくしたノックアウト細胞において野生型細胞と変わらないNAD+分解が生じることを初めて見出した。さらにPARP-2、SIRT1、SARM1遺伝子ノックアウト細胞においてもNAD+分解が有意に低下しないことを見出し、これら酵素のNAD+分解への関与が否定された。さらに令和4年度では、令和3年度に作成したCD38安定発現細胞におけるNAD+分解速度を野生型細胞のものと比較し、野生型細胞と変わらないNAD+分解が生じることを見出した。未だNAD+分解を担う酵素を同定できてはいないが、候補酵素を一つずつ検討し除外し、着実にデータを取得してきている。

今後の研究の推進方策

令和5年度では、NAD+濃度調節におけるNAD+分解酵素の同定を引き続き行う。一方で、ある特定のNAD+分解酵素を欠損させた細胞では、他のNAD+分解酵素の発現あるいは活性が増加している可能性が否定できない。たとえば、PARP-1を欠損させると他の酵素の発現が増強されるといった可能性である。この可能性についても検討する。

次年度使用額が生じた理由

購入予定の試薬の価格改定のため残額では購入できなかった。
(使用計画)
次年度経費に組込み予定試薬を購入する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Involvement of CD38 in NAD+ turnover in mammalian cells2022

    • 著者名/発表者名
      Nobumasa Hara, Harumi Osago, Mineyoshi Hiyoshi, Mikiko Kobayashi-Miura
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会

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公開日: 2023-12-25  

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