SSNは視床下部外側野と直接的に神経連絡がある。SSNに投射する視床下部外側野ニューロンにチャネルロドプシン2(ChR2)を発現させるにあたり、確認しなければならないことがある。つまりSSNには複数の標的組織(顎下腺・舌下腺、舌前方部の血管および涙腺)に対する副交感神経節前神経の細胞体が存在するので、ChR2を搭載したウィルスをSSNに投与するにあたり、これらの支配ニューロンの分布を調べておく必要がある。そこで本年度は成熟ラットにおいて、2種類の組織に別々の色素で標識し、すなわち唾液腺ニューロンはTexas Redで、涙腺または舌血管ニューロンをFluoresceinで逆行性に標識し、標識ニューロンの分布を観察した。唾液腺、涙腺および舌血管ニューロンのそれぞれの分布は過去の結果と似ていた。しかし2種類の組織に対するニューロンの分布を同時に調べることで、唾液腺および舌血管ニューロンは混在し、涙腺ニューロンは唾液腺ニューロンの腹側部に分かれて分布することが判明した。したがって、SSNにウィルスを投与した場合、唾液腺支配だけでなく舌支配ニューロンに対する視床下部外側野ニューロンも標識される可能性があることが明らかになった。一方、電気生理学的解析で、唾液腺または舌血管ニューロンを逆行性にDextran-Texas Redで標識し、新鮮脳スライス標本の標識ニューロンからホールセルパッチクランプ法により記録した。OXAに対して唾液腺および舌血管ニューロンともに用量依存性の内向き電流を発生したが、その反応曲線は似ていた。それぞれのニューロンの微小興奮性シナプス後電流の発生頻度はOXA存在下で変化しなかった。従って、唾液腺および舌血管ニューロンの神経活動はともにOXAにより促進されるが、その作用は主にシナプス前膜ではなくシナプス後膜のOX受容体を介すると考えられた。
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