研究課題/領域番号 |
21K11702
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
岩城 俊雄 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 准教授 (20295728)
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研究分担者 |
乾 博 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 客員研究員 (20193568)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | n-7系一価不飽和脂肪酸 / cis-バクセン酸 / オレイン酸 / GC-MS |
研究実績の概要 |
脂質の栄養学的研究は,エネルギー代謝に着目した従来の量的変動から,脂肪酸成分が持つ生理機能に基づいた質的変動の重要性について注目されつつある.近年では,肥満ならびに生活習慣病の増加が問題となり,これら疾患の予防対策が喫緊の課題である.EPAやDHAなどのn-3系,アラキドン酸やγ-リノレン酸などのn-6系で知られる多価不飽和脂肪酸の生理機能については多くの研究成果があり,脂質栄養の観点から理解が進んでいる.一方,動物細胞の脂質構成成分の半分を占める一価不飽和脂肪酸については,オレイン酸(C18:1,n-9)やパルミトレイン酸(C16:1,n-7)でいくつかの重要な生理作用が報告されているのみである.さらに,動物細胞に多く含まれるn-7のcis-バクセン酸やn-5,n-12などの一価不飽和脂肪酸などは果実をはじめとする食品中に多量に含まれているにも関わらず,動物細胞における取込みや代謝などの研究はほとんど進んでいない.本研究では,食品中に含まれる各種一価不飽和脂肪酸の代謝動態の解明を目指し,生活習慣病予防への寄与の観点から動物細胞への取込みや代謝動態などの栄養科学的研究基盤を確立する. 令和3年度は,(1)n-5, n-12, n-7の一価不飽和脂肪酸のC2位重水素標識体の合成,(2)培養細胞への脂肪酸の添加条件の検討,およびGC,GC-MSによる解析基盤の構築を進めている.細胞抽出画分については,脂質クラスごとの詳細な解析が必要となるためTLCやHPLCを用いた分画方法の確立を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)脂肪酸添加実験に供する培養細胞としてラット由来血管平滑筋細胞(VSMC)を入手した.さらに,脂肪酸添加実験の各種条件検討を実施し,添加実験系の確立ができた. (2)培養細胞からの脂質抽出画分における脂質プロファイル解析のためのGC分析条件の検討を実施した.解析対象となる脂肪酸メチルに応じて分析条件は調整する必要があるが,解析には十分な感度を示すことができた.(3)n-7系一価不飽和脂肪酸である,cis-バクセン酸の添加実験を進めたところ,そのリン脂質画分への取り込みがオレイン酸とは異なる制御によって再配置されている可能性を示唆する結果が得られており,さらに解析を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
(1)初年度に確立できた,脂肪酸添加系および解析系をさらに改良するとともに,すでに合成した4種類の一価不飽和脂肪酸の添加実験を実施する. (2)前項の実験で得られた結果をもとに,各種脂肪酸添加による炎症性関連因子(TNF-α,NFκB,IL-6,COX-2,MCP-1,PPARα等)の発現誘導をELISA,RT-qPCRなどで解析することで,cis-Vacなどの一価不飽和脂肪酸のもつ新たな生理機能の解明や応用研究へと発展させる基盤情報を取得する.
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