研究課題/領域番号 |
21K11707
|
研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
永井 俊匡 高崎健康福祉大学, 農学部, 准教授 (50451844)
|
研究分担者 |
朝倉 富子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (20259013)
清水 愛恵 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 助手 (30816343)
豊田 集 高崎健康福祉大学, 農学部, 助手 (70808998)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 咀嚼 / 自律神経系 / 内分泌系 / トランスクリプトーム / 血圧 |
研究実績の概要 |
咀嚼は、単に消化作用のみではなく、生命の維持に極めて重要で広範な作用を持つ。しかしその効果は現象論的な議論にとどまっており、メカニズムの解明には至っていない。そこで報告者らは、これまでに粉末飼料または固形飼料をラットに与え、DNAマイクロアレイにより脳内発現遺伝子を網羅的に解析した。その結果、15週飼育後のラットで固形飼料による血圧の有意な低下を観察し、視床下部で自律神経系や視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸に関与する遺伝子群の発現変動を見出した。本研究では、咀嚼による血圧制御メカニズムの解明を目指す。 自律神経系とHPA軸による血圧制御を検証するには、次に挙げる①~③の3つの解析による制御分子候補の解析が、まず必要である。すなわち「①トランスクリプトーム解析による制御分子候補の絞り込み」、「②動物の行動試験による咀嚼とストレス応答の相関解析」、そして「③自律神経系・HPA軸と咀嚼との相関の検証」である。本研究では、これらの推進を計画しており、2022年度における進捗を、以下に述べる。 ①のトランスクリプトームから、2021年度に血圧制御分子の候補を抽出してあったので、2022年度には③と関連して、それら因子の血中濃度測定を行った。その結果、少なくとも検討した範囲では自律神経系の関与が認められず、HPA軸による制御の寄与が大きいことが示唆された。また、15週よりも短期の、5週・10週飼育における変化を予備的に測定した。その結果、血圧と血清ACTH濃度において、粉末飼料群と固形飼料群との群間差よりも、成長に伴う変化の方が大きかった。 2021年度までの研究成果を、原著論文としてまとめ、発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「①トランスクリプトーム解析による制御分子候補の絞り込み」と「③自律神経系・HPA軸と咀嚼との相関の検証」について、2021年度に血圧制御分子の候補を抽出した。そこで、2022年度には、それら因子の血中濃度測定を行った。その結果、血中バソプレシンや宛てコールアミン量に群間差はなかった。すなわち、バソプレシンによる抗利尿作用や、カテコールアミンによる心拍変動・血管収縮作用は、咀嚼による影響を受けていないことが考えられ、HPA軸による制御の寄与が大きいことがより強く示唆された。 これまでは15週飼育における咀嚼の血圧上昇抑制効果を検討してきたが、より短期の飼育ではどうであるか予備的に検討した。その結果、5週飼育(n=5)、10週飼育(n=5)とも、血圧と血清ACTH濃度において、粉末飼料群と固形飼料群との間に、有意な差はなかった。ラットは成長に伴って血圧が上昇することが知られている。この成長による個体差が大きく、今回の試験では統計解析に十分な個体数が得られていないと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
ここまでの成果を、原著論文としてまとめるべく、執筆の準備を始める。まだ検討不十分な血圧制御因子候補があるため、それらの解析を進めていく。 5週・10週飼育については、統計的に十分な個体数を確保して再検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ラットの飼料を2022年度中に発注する予定でいたが、特注品のため納期が間に合わず、2023年度に発注した。
|