研究課題/領域番号 |
21K11712
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
藤岡 由夫 神戸学院大学, 栄養学部, 教授 (70299098)
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研究分担者 |
眞本 利絵 神戸学院大学, 栄養学部, 実験助手 (60189892)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | heme-oxygenase-1(HO-1) / adipocyte / macrophage / Fatty acid / lipid metabolism |
研究実績の概要 |
脂肪細胞単独及び脂肪細胞とマクロファージ共培養下において、各種脂肪酸の脂肪細胞の脂質代謝関連遺伝子および転写因子を含むシグナル伝達機構への関与を調べ、脂質代謝調節を明らかにすることを目的とし、脂肪細胞における抗炎症作用、抗酸化作用を有するheme-oxygenase-1(HO-1)に焦点をあてた。飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪、トランス脂肪酸など各種脂肪酸添加の効果をHO-1 mRNA発現とたんぱく質発現を用いて行った。まず脂肪酸負荷による細胞障害性の有無をWST-1法で確認し、1,000 μmol/L負荷で細胞生存率が有意に低下した。HO-1 mRNA発現は、脂肪細胞単独及び共培養では飽和脂肪酸、トランス脂肪酸負荷によりコントロールと比較して抑制された。また、どちらも多価不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)でのみ有意に増加していた。HO-1のたんぱく質発現では、単独培養ではパルミチン酸で有意に減少し、共培養では飽和脂肪酸のパルミチン酸、ステアリン酸でともに有意な減少がみられた。一価不飽和脂肪酸であるパルミトオレイン酸、オレイン酸では、単独培養ではどちらも有意な減少がみられ、共培養でパルミトオレイン酸は100 μmol/Lで有意に上昇がみられた。多価不飽和脂肪酸では、エイコサペンタエン酸、DHAで単独培養および共培養で濃度依存的に上昇がみられ、アラキドン酸では単独培養、共培養ともに有意な減少がみられた。またトランス脂肪酸であるトランスパルミトオレイン酸、エライジン酸、トランスバクセン酸で単独培養および共培養で各トランス脂肪酸負荷によりコントロールと比較して発現は抑制された。これらのことから、単独培養および共培養した脂肪細胞へ脂肪酸負荷において、HO-1 mRNA発現と蛋白質発現に負荷する脂肪酸で差があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度に脂肪細胞単独で脂質代謝関連酵素[ホルモン感受性リパーゼ(hormone sensitive lipase : HSL)、脂肪細胞特異的TG リパーゼ(adipose triglyceride lipase : ATGL)、中性コレステロールエステル分解酵素(Neutral cholesterol ester hydrolase 1 : NCEH1)]、コレステロール排出機構に関わるATP 結合カセットトランスポーターA1(ABCA1)とG1(ABCG1)、そしてスカベンジャー受容体(SR-B1、CD36)の蛋白発現量をウェスタンブロッティングでの解析及び細胞上清中の炎症関連サイトカインである、TNF-αとIL-1α,β、ライセートから転写因子NF-κB やNrf2をELISA 法で測定する予定であったが、HO-1のウェスタンブロッティングに想定外の時間を要したため、時間的に後れを出している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで、研究がやや遅れているが、令和3年度に作成し保存しているウェスタンブロッティングとリアルタイムサンプルを用いて令和4年度以降に予定している様々な脂肪酸負荷後の脂質代謝関連酵素[ホルモン感受性リパーゼ(hormone sensitive lipase :HSL)、脂肪細胞特異的TG リパーゼ(ATGL)、中性コレステロールエステル分解酵素(NCEH1)、コレステロール排出機構に関わるATP 結合カセットトランスポーターA1(ABCA1)とG1(ABCG1)、そしてスカベンジャー受容体(SR-B1、CD36)の蛋白発現量、HO-1、HSL、ATGL、NCEH1、ABCA1、ABCG1、SR-B1、CD36 のmRNA 発現に順次測定する予定にしているので、順調に進む予定でいる。同様に保存してある上清を用い様々な脂肪酸負荷後の細胞上清中の炎症関連サイトカインである、TNF-α、IL-1α,β をELISA 法で測定する。ライセートから転写因子NF-κB やNrf2 測定用のライセートを作成し、ELISA法で測定する。シグナル伝達経路(Nrf2、ERK、p38 MAPK、AP-1、PI3K/Akt、NF-κB を含めた炎症制御機構)の変動についてもキットで測定する。マクロファージ単独培養でのTNF-α、IL-1α,βmRNA 発現や細胞内脂質量(トリグリセライド、コレステロール)の変動についてもキットで測定する。発現抑制からみたHO-1 発現調節の解明のため効果を認めた脂肪酸の条件下で、HO-1 や転写因子および関連遺伝子、シグナル伝達経路の変動をウェスタンブロッティング法あるいはリアルタイムPCR法、その他キットでRNAi 法や阻害薬を用いて発現を検討する。シグナル解析も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では、令和3年度10月までに細胞障害性試験、HO-1細胞内質量、関連酵素及び蛋白発現に関する実験(ウェスタンブロッティング及びリアルタイムPCR)を終了し、その後、転写因子NF-κB やNrf2 をELISA 法で測定する予定でいたが、当初の計画で予定していた蛋白発現解析(ウェスタンブロッティング)がうまくいかないという想外の結果となり、十分なデータ量を取得できず、新たに3か月を要したため、転写因子NF-κB の測定が遅れた。そのために使用する試薬がそれまで国内在庫があったが、海外発注をしなければならない事態に陥り、入手に数か月要することが判明したため、年度内完了が困難となった。現在、試薬は発注継続であり、令和4年度に入手次第、HO-1 発現におけるシグナル伝達経路の解明と並行して、実験を行う予定をしている。
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