研究課題/領域番号 |
21K11722
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
伊藤 智広 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (30435854)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 分化 / 膜小胞 / 糖鎖 / 膜脂質 / 骨細胞 |
研究実績の概要 |
メカニカルストレスを負荷した骨細胞から調製した膜小胞による前駆破骨細胞の成熟分化機構を検討するために,メカニカルストレスを負荷した骨細胞(MsOc-MVs)から調製した膜小胞の膜構成糖鎖および脂質成分について解析した。 糖鎖は「細胞の顔」とも呼ばれ,細胞の表面にて細胞の識別や受容体の機能制御に寄与しており,膜小胞においては糖鎖が受容細胞への取り込みに深く関わることから重要なコミュニケーションツールとなっている。このメカニカルストレスを負荷した骨細胞から調製した膜小胞の糖鎖プロファイリングについては,膜タンパク質を抽出後,GlycoStaion2300によるレクチンアレイ解析により行った。その結果,単位タンパク質あたりの糖鎖修飾量はストレス負荷細胞で減少することが示唆され,膜タンパク質の方が細胞小胞よりもその影響を受けやすいことが推察された。また,メカニカルストレス負荷により糖鎖修飾量は少ないが,α2-6結合のシアル酸結合の増加を確認した。細胞外小胞では末端シアル酸修飾を受けたN型糖鎖構造の割合や同様にシアル酸修飾を受けているO型糖鎖の増加も推測された。 また,小胞膜の脂質成分は分化誘導機能に深く関与しており,破骨細胞融合系においてはホスファチジルエタノールアミンの生合成量が高まっていることが知られている。そこで,MsOc-MVsに含まれる脂質プロフィールをLC-MS/MSを用いたエクソソームリピドミクス解析により網羅的な比較解析を行った。現在,詳細な比較解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初初年度をSPR顕微鏡法にてメカニカルストレスを負荷した骨細胞から調製した膜小胞に特異的に発現しているCD9やオステオポンチンと受容細胞との相互作用を検討する予定であったが,コロナウイルス感染拡大のため,機器を利用できる施設へ出向くことができず,進捗に支障が生じない項目から取り掛かる計画に変更した。この対処により,現時点では順調に進行できている。次年度も引き続き検討できる事項から優先的に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,MsOc-MVsを受容する破骨細胞と受容しない破骨細胞の構造的違いを見出す。MsOc-MVsを受容した破骨細胞を一細胞ピッキング装置により回収し,受容しない細胞との膜タンパク質プロフィールをLC-MS/MSによるショットガン解析および一細胞RNA-seq解析を進める。 また,運動時にはメカニカルストレスは前駆破骨細胞にも骨細胞と同様に負荷されているため,メカニカルストレスを負荷した前駆破骨細胞はよりMsOc-MVsを受容する構造に変化していることが推察される。一方,微小重力環境ではメカニカルストレスを受容しないために骨細胞の分化シグナルが受容しにくい状態(構造)になっているのではないかと推察される。そこで,設置済みの静水圧加圧システムと微小重力環境培養装置で破骨細胞をそれぞれ培養し,MsOc-MVsによる分化誘導の確認ならび,それぞれのメカニカルストレス処理細胞の膜タンパク質プロフィールが常圧環境下にて培養したMsOc-MVs受容破骨細胞の膜タンパク質プロフィールと違いがあるのか比較解析する。これらのアプローチにより,MsOc-MVsの受容に関わる候補分子を絞り込む。
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