研究課題/領域番号 |
21K11722
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
伊藤 智広 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (30435854)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 骨細胞 / 膜小胞 / 分化 / 取り込み |
研究実績の概要 |
メカニカルストレスを負荷した骨細胞から調製した膜小胞(MsOc-MVs)による前駆破骨細胞の成熟分化機構を検討するために、MsOc-MVsをPaul Karl Horan 67 (PKH67)試薬にて蛍光染色し、受容した前駆破骨細胞が破骨細胞に分化誘導されるのか検討した。しかし、PKH67で染色したMsOc-MVsの破骨細胞への取り込みは一部の細胞に限られ、MsOc-MVs自身も凝集をしている様子が観察され、前駆破骨細胞への取り込みに不具合を与えている可能性が考えられた。すでに、PKH26による蛍光染色がエクソソームの膨張を引き起こし、生体内におけるエクソソームの分布と細胞への取り込み率を変化させる可能性があると示唆されていることからも、今回のPKH67蛍光染色においてもその影響が強いと考え、東洋インキ株式会社の協力を得て蛍光試薬をSciForiem Fl7510に切り換えて、再度前駆破骨細胞へのMsOc-MVsの取り込み試験を行った。その結果、MsOc-MVsは全ての前駆破骨細胞への取り込みが均一に行われている様子を再現よく確認することができた。MsOc-MVsの分化誘導試験では一部の前駆破骨細胞のみが破骨細胞への分化を示したことから、MsOc-MVsを積極的に取り組んでいる細胞の破骨細胞分化へのモニタリングとMsOc-MVsを取り込んだ前駆破骨細胞をピックアップすることによる細胞機能解析を進める予定でいたが、全てのMsOc-MVsが取り込まれている結果を得たことから、前駆破骨細胞を取り込んだ全ての前駆破骨細胞を対象とした細胞集団に含まれる細胞タイプ推定をシングルセル解析にて検討する計画に切り換えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一つ目に、メカニカルストレスを負荷した骨細胞から調製した膜小胞(MsOc-MVs)の破骨細胞への取り込みをモニタリングする際に使用した蛍光色素の選択により取り込み細胞の量が変動し、安定した取り込み確認ができる試薬の選定や条件設定に時間を要した。二つ目に、MsOc-MVsを取り込んだ前駆破骨細胞を用いた細胞集団クラスタリング・発現変動遺伝子の抽出を行う計画へ変更が生じたため、解析受託企業との実験調整や予算調整が発生した。
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今後の研究の推進方策 |
MsOc-MVsを取り込んだ全ての前駆破骨細胞を対象とした細胞集団に含まれる細胞タイプの推定をシングルセル解析にて検討する。MsOc-MVs受容による破骨細胞分化に関わるの細胞集団の特定を発現変動遺伝子の抽出により、MsOc-MVsの受容からの細胞状態の変化を擬似時間解析によりそれぞれ検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の本年度の研究計画では、MsOc-MVsを積極的に取り組んでいる細胞の破骨細胞分化へのモニタリングとMsOc-MVs取り込んだ前駆破骨細胞をピックアップすることによる細胞機能解析を進める予定でいたが、このMsOc-MVsを積極的に取り組んでいる細胞の検証結果が使用した蛍光標識色素の凝集による細胞への取り込みの不具合を引き起こした表現系であることが判明した。そのため予定していた選抜細胞のシングル解析ではなく、MsOc-MVを取り組んだ全ての前駆破骨細胞をを対象とした細胞集団に含まれる細胞タイプ推定をシングルセル解析にて検討する計画に切り換える必要性が発生した(本年度予算では解析費用に不足が生じるため、シングルセル解析に用いる細胞回収条件の選定にまでとどめ、次年度の一斉解析とした)。この変更により2022年度残額を2023年度予算へ繰り越した。
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