研究課題/領域番号 |
21K11728
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
松尾 和彦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70599753)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 一次線毛 / 中心体 / 血管内皮 |
研究実績の概要 |
本研究は、PCNT変異による動脈病変は内皮細胞の細胞老化に原因があるという独自の作業仮説に基づき、PCNTを起点として内皮細胞の細胞老化に資する基底小体の生物学的機能と、個体内での内皮細胞老化と血管病変の因果関係を解明する為の基盤研究を目的としている。 初年度は、「1.血管内皮細胞においてPCNTと相互作用する分子の探索」、「2.PCNTが血管内皮細胞で担うシグナルの解析」、「3.Pcntコンディショナル KOマウスの作製」の3つの課題について研究を行う計画であった。これら全ての研究計画に関してES細胞のゲノム編集及びゲノムの改変作業が必要となる。しかしながら、この実験に必要なtargeting vectorの構築に関して、想定していたよりも構築過程が複雑であり、またPCRによるPCNT遺伝子増幅も想定よりも困難であったため、当初計画より各研究計画が少し遅れている。 「1.血管内皮細胞においてPCNTと相互作用する分子の探索」に関しては、targeting vectorの作製に時間を要したため、研究課題を進める為にTurboIDをPCNTのN末端に付加したTurboID-PCNTを作製し、上皮由来の培養細胞であるRPE1に一過性に発現させた後、高濃度のビオチンを添加する事で近接依存性標識法による結合タンパク質の同定を試みた。血管内皮細胞とは異なるが、同じ上皮組織由来の細胞におけるPCNTの結合タンパク質が同定できれば、血管内皮細胞でも同じ分子と相互作用する可能性が考えられるため、今後の研究の方向性を決める重要なデータと成り得る。現在は、得られた結合タンパク質の候補のデータから、実際の細胞内でPCNTと結合しているかを確かめるための実験をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は次の3つの研究計画から構成されている。つまり「1.血管内皮細胞においてPCNTと相互作用する分子の探索」、「2.PCNTが血管内皮細胞で担うシグナルの解析」、「3.Pcnt コンディショナル KOマウスの作製」である。これらの研究の遂行にはES細胞のPcnt遺伝子の改変が必要である。申請者はCRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集技術により目的遺伝子配列をPCNT遺伝子と発現フレームが一致するように正確に挿入することを計画している。この実験には目的の遺伝子配列を切断する際に必要なCas9とsgRNAを発現させるplasmid vectorと、切断した箇所に正確に目的の遺伝子配列を挿入・修復するためのドナー配列を含むtargeting vectorが必要である。このtargeting vectorの構築過程が、当初の計画よりも複雑になり、また、このvector構築に必要なPcnt遺伝子配列がPCRにより増幅する事が想定よりも困難であったため、当初計画より各研究計画が少し遅れている。 研究計画「1.血管内皮細胞においてPCNTと相互作用する分子の探索」に関しては、targeting vectorの作製に時間を要したため、当初の計画とは異なるが、上皮組織由来の培養細胞を用いてTurboIDをPCNTのN末端に付加したTurboID-PCNTを一過性に発現させることで、PCNTに結合するタンパク質の同定を試みた。現在は、得られた結合タンパク質の候補のデータから、実際の細胞内でPCNTと結合しているかを確かめるために、PCNT結合タンパク質の候補となる分子に関して免疫蛍光染色やwestern blottingなどの実験をおこなっている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、本研究の遂行には、目的の遺伝子配列を切断する際に必要なCas9とsgRNAを発現させるplasmid vectorと、切断した箇所に正確に目的の遺伝子配列を挿入・修復するためのドナー配列を含むtargeting vectorが必要である。今後の研究推進のためにも、targeting vectorの構築は最優先課題であり、当面はこの構築作業にエフォートを割いて取り組む予定である。 また、研究計画「1.血管内皮細胞においてPCNTと相互作用する分子の探索」に関しては、既に代替計画にてPCNTの結合タンパク質同定のためにデータ解析を行ったが、上記targeting vectorを作製し次第、当初の研究計画で実施する予定であったES細胞を用いた実験により再度データを取得する予定である。このデータの解析を行うことで、上皮組織由来の細胞で普遍的に同じ分子と結合しているのか、若しくは血管内皮細胞では別の分子と結合し、血管内皮細胞に特化した現象に関与しているのかが推察できる。 研究計画「1.血管内皮細胞においてPCNTと相互作用する分子の探索」に関しては、targeting vectorの作製に時間を要したため、当初の計画とは異なるが、上皮組織由来の培養細胞を用いてTurboIDをPCNTのN末端に付加したTurboID-PCNTを一過性に発現させることで、PCNTに結合するタンパク質の同定を試みた。現在は、得られた結合タンパク質の候補のデータから、実際の細胞内でPCNTと結合しているかを確かめるために、PCNT結合タンパク質の候補となる分子に関して免疫蛍光染色やwestern blottingなどの実験をおこなっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画が当初よりも遅れているため、本年度実施する予定であった細胞培養関連試薬の購入を延期して、次年度に繰り越した。
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