研究課題/領域番号 |
21K11729
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
工藤 利彩 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (20347545)
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研究分担者 |
勇井 克也 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50783875)
粕田 承吾 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (70434941)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 拡張不全 / 高血圧 / 血管内皮細胞由来過分極因子 / 末梢循環 |
研究実績の概要 |
近年、高齢者心不全の多くは、左室収縮機能が保持されつつ拡張機能障害を主体とする拡張不全である。拡張不全は予後不良であり、確立した治療法はなく、その発症および病態進展機序の解明が急務となっている。 拡張不全の発症基盤には高血圧があり、心臓単独の疾患ではなく心臓と動脈系の相互作用から惹起されることから、本研究では、高血圧性心不全モデルとして確立しているダール食塩感受性(Dahl-S)ラットの上腸間膜動脈を用い、高血圧期と拡張不全期における誘導型血管内皮細胞由来過分極因子(iEDHFs)による末梢循環調節機構を一酸化窒素(NO)とのクロストークを中心に解明することを目的とした。 雄性Dahl-Sラットに7週齢より8%食塩含有食を摂取させ、高血圧群は12週齢まで、拡張不全群は19週齢まで飼育し、普通食(0.3%食塩含有食)で飼育した食塩非感受性(Dahl-R)ラットを対照群とした。 12週齢と19週齢のいずれにおいても、血圧はR群に比べS群で有意に高値を示し、左室駆出率・左室内径短縮率は両群とも正常範囲内であった。左室壁の肥厚、左室拡張末期径および収縮末期径の減少は12週齢のS群で顕著であり、19週齢のS群では左室拡張末期径の減少は改善されていた。 上腸間膜動脈におけるアセチルコリンによる血管内皮細胞依存性弛緩については、12週齢ではR群に比べS群でEDHFsの経路の弛緩が減弱し、NOの経路の弛緩が有意に増大したのに対し、19週齢では逆にR群に比べS群でEDHFsの経路の弛緩が有意に増大した。これらの結果から、iEDHFsは高血圧期には誘導されず、心不全の初期段階である拡張不全期からNOに代わって誘導されることが示唆された。本研究で示したiEDHFsによる末梢循環調節機構は、高血圧や拡張不全などの心血管病の治療法の開発の手がかりとなり、創薬への応用が期待される。
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