研究課題/領域番号 |
21K11732
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
黒川 和宏 国際医療福祉大学, 薬学部, 講師 (30454846)
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研究分担者 |
辻 稔 国際医療福祉大学, 薬学部, 教授 (70297307)
宮川 和也 国際医療福祉大学, 薬学部, 准教授 (10453408)
高橋 浩平 国際医療福祉大学, 薬学部, 助教 (90846411)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ストレス / 雌性 / うつ病 / ミエリン |
研究実績の概要 |
運動が将来的な疾病予防だけでなく、気分転換およびストレス解消に繋がり、メンタルヘ ルスの不調を改善することに有効であるとされている。さらに、現代社会においてランニングはブームを超え、ライフスタイルの1つになりつつある。基礎研究において、ランニング運動によりAMP活性化プロテインキナーゼが活性化することが明らかにされている。一方、我々はこれまでに、雄マウスの海馬のミエリン形成障害がストレス性精神疾患の発症に関与していることを明らかにしている。また、ストレス性精神疾患のかかり易さには性差があり、うつ病や不安障害の罹患率は女性の方が男性より高いことや既存の治療薬に効果を示さない難治性うつ病患者の増加が報告されている。そこで2021年度では、雌マウスを用いて慢性拘束ストレス負荷刺激によるストレス適応能力への影響ならびにうつ様行動の変化について検討した。まず、1日1回4時間の拘束ストレスを2週間慢性負荷し、最終ストレス負荷直後にホールボード試験にて情動行動(ストレス適応能力)を評価したところ、ストレス適応が形成されず、情動行動は低下していた。また、慢性ストレス負荷直後における不安について高架式十字迷路を用いて検討したところ、慢性ストレス負荷により、オープンアームの滞在時間の有意な減少が認められ、不安様行動が惹起された。さらに、テールサスペンション試験によりうつ様行動の指標である不動時間を測定したところ、慢性ストレス負荷によりうつ様行動が認められた。これらの結果から、雌マウスを用いて性差に基づくストレス性精神疾患の病態解明が可能であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、雌性マウスを用いて、ランニング運動がミエリンの形成に及ぼす影響を多角的に実証し、ストレス性精神疾患の発症の予防あるいは改善の可能性を提唱することで新規うつ病治療薬の開発への応用につなげることである。この目的の達成に向けて、2021年度では、雌マウスを用いてストレス性精神疾患モデルマウスの作成を行った。結果として、「研究業績の概要」に記載したとおり、雌マウスのストレス性精神疾患モデルマウスの作成に成功した。なお、当初予定していたそのモデルマウスの脳内におけるミエリン構成タンパク質、オリゴデンドロサイト前駆細胞、成熟型オリゴデンドロサイト、アストロサイトおよびミクログリアの発現量ならびに形態変化については、当該年度内に実施できなかったため、次年度の検討課題とした。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度では、雌マウスを用いてストレス性精神疾患モデルマウスの作成に成功した。このことを踏まえて、2022年度では、Western blot法および免疫組織化学染色法に従い、それらのモデルマウスの脳内におけるミエリン構成タンパク質、オリゴデンドロサイト前駆細胞、成熟型オリゴデンドロサイト、アストロサイトおよびミクログリアの発現量ならびに形態変化を解析する予定である。また、ストレス性精神疾患モデルマウスにAMPK活性化薬を投与することで、ストレス適応能力に対する影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」に記載したとおり、2021年度内では、当初予定していたストレス性精神疾患モデルマウスの脳内におけるミエリン構成タンパク質、オリゴデンドロサイト前駆細胞、成熟型オリゴデンドロサイト、アストロサイトおよびミクログリアの発現量ならびに形態の解析まで至らなかった。したがって、これら検討のために見積もっていた各種消耗品(実験動物、抗体、western blot用試薬・消耗品、組織化学的検討用試薬・消耗品など)の費用を、次年度に繰り越すこととした。本未検討課題については2022年度に実施する予定であり、その際に発生する費用に今回繰り越した次年度使用額を充当する。
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