研究課題/領域番号 |
21K11749
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
鈴木 淳 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (70565332)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 最適実験計画法 / 量子情報幾何学 / 量子推定理論 / 量子Fisher計量 |
研究実績の概要 |
非線形実験計画法における情報幾何学を議論するための定式化と最適なデザインの導出を目標とし、研究課題を実行している。 新規性としては、量子情報幾何学的なアプローチを取ることにより、従来の実験計画法では議論されてこなかった、より一般の統計モデルに対して大域的に最適なデザインの設計が可能になること、 また通常の情報幾何学の特徴である双対平坦構造を持たないような統計モデルに対する幾何構造を明らかにすることである。
そこで、初年度は一般の非線形実験計画法に関するモデルの定式化を行った。特に、対称錐となるようなベクトル空間について、情報幾何学的な考察が可能かについて考察を進めてきた。次に、量子系に関する情報幾何学的な解析として、主に以下の4つの成果を得た。(i) 純粋状態モデルに摂動が加えられたモデルに対する幾何構造、(ii) ベイズ基準に基づく最適な実験計画法における推定誤差限界の導出、(iii) 有限サンプルに関する誤差限界と漸近的な誤差限界に関するギャップの性質、(iv) 量子ガウス状態の推定に関する相対論的な効果について。
成果(i)については、先行研究で得られた結果では正しい接空間の幾何構造を調べることができないことを示し、新しい摂動方法を提案した。(ii)については、現在までに知られている誤差限界よりも一番良い評価方法となっていることが示され、より詳細な解析と具体例への応用が期待される。これらを含む研究成果を国内研究会3件、国際会議1件で発表している。また、現在論文執筆を3件行っており、そのうち1件についてはアーカイブで公開済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部申請時の研究計画からは遅れている箇所もあるものの、予定されていた研究計画の方法とは異なる研究方法を発見し、次年度以降の研究につながることが分かった。そのため、初年度の実施が当初の予定からは少し変更した。研究課題全体として研究目標を達成するための研究の進捗状況としては、既に4件の発表を行い、一定の成果が得られていることから、「おおむね順調に進展している」との評価とした。
一方で、当初、初年度に計画を予定であった一般の非線形実験計画法に関する情報幾何学的な定式化については、一部うまく行っていないところがあり、次年度に取り組む。また、最適な実験計画を求める最適化アルゴリズムについても、アルゴリズムの実装にまでは至っておらず、次年度に優先して実施する課題である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度には、まず、初年度に得られた研究成果について、論文執筆と投稿を行う。同時に、初年度に予定していた一般の非線形実験計画法に関する情報幾何学的な定式化について、双対接続構造を考慮し、論文執筆を行う予定である。もう一つの課題である、最適な実験計画を求める最適化アルゴリズムについては、現在指導学生と2つの最適化アルゴリズムについて考察を進めており、実装し、その有効性について検証する。
初年度に得られた、(ii) ベイズ基準に基づく最適な実験計画法における推定誤差限界の導出と(iii) 有限サンプルに関する誤差限界と漸近的な誤差限界に関するギャップの性質、については、情報幾何学的な考察ができておらず、次年度の引き続き取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた出張費がほとんどかからず、オンライン参加した国際会議についても参加費が無料となったため、残額が生じた。また、初年度に指導博士後期課程学生に謝金を支払う予定であったが、コロナ禍のため未入国の状態であり、謝金の支払いができなかった。これらの残額については、次年度の出張費、および、謝金として使用する予定である。
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