研究課題/領域番号 |
21K11751
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
王 贇トウ 大阪大学, 工学研究科, 講師 (00880791)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 格子暗号 / コミットメント方式 / 署名方式 / 安全性評価 |
研究実績の概要 |
(1)格子ベースコミットメント方式の研究を行った.Baumらは,2018年に大きなメッセージサイズの送信を可能にするコミットメント方式を構築した.しかし,入力の部分にメッセージ以外の目的で利用される空間が適用されており,メッセージに適用可能な空間はより大きくできる余地がある.本研究では,Baumらの提案方式のメッセージ空間をより大きくするコミットメント方式を提案し,束縛性と秘匿性から安全性を証明した.本研究結果は国内学会SCIS2022で発表し,国際会議ISPEC2021に採録された.フルバージョンをジャーナルに投稿中である. (2)低出力局所性(LOL)とは,すべての出力ビットが少数の入力ビットに依存する関数の特性である.IoTの協調作業では,LOLが低いという特徴が非常に有効である.本研究では,定出力局所性耐衝突ハッシュ関数から出力局所性3を持つコミットメント方式を初めて構成した.提案方式の計算隠蔽性を決定論的(M,δ)-bSVP仮定により,計算結合性を(M,δ)-bSVP仮定により,それぞれ証明した.また,128bit安全性を持つパラメータ案を示した.本研究結果はHindawiジャーナルに受理された。 (3)格子ベース署名に関する研究を実施した.本研究では,Lyubashevskyの署名方式を基に実用的な格子ベース閾値署名方式を提案した.本提案はラウンド最適化されていないものの,構成が単純であるため,従来研究より実用的である.N-out-of-N方式を提案し,線形秘密分散法を用いて任意の閾値に拡張した.さらに,提案方式はランダムオラクルモデルにおいてSIS仮定で安全である.本研究結果は国内学会SCIS2022で発表した. (4)その他,格子困難問題(SVPとGACD)に対し,それぞれ解読手法を改良し,研究結果は国際会議ICISC2021とIEICEジャーナルに採録された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は「暗号方式の設計」,「証明可能安全性の考察」,「解読アルゴリズムの考察による安全性評価」と「提案暗号方式の実装」4つの項目で計画を立てた.各項目に取り組み,研究実績を出したので順調に進んでいると考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として格子ベース暗号と多変数多項式暗号の融合した暗号方式を考察する予定である。また,格子ベース署名の開発に関して続けていく予定である.そこで,プロトコルの設計から,理論的安全性証明,パラメータの提案,実装まで理論から応用まで取り組む.さらに,安全性解析するために,格子解読アルゴリズムの改良も続けていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナ禍の影響で当初出張費などの予定額が使用できなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度はコロナの終息を見込み、研究の最新動向を把握するため、及び研究成果を発表するため、国内研究会、国際会議、及びセミナーへの参加費及び旅費が必要だと考える。また、次年度ではアルゴリズム関連の書籍と実験用の計算機を購入すると考える。
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