研究課題/領域番号 |
21K11755
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
宮野 英次 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (10284548)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 組合せ最適化問題 / 計算困難性 / 多項式時間アルゴリズム / 近似アルゴリズム / 指数時間アルゴリズム / 最小全域木問題 / マッチング問題 / 最長共通部分列問題 |
研究実績の概要 |
組合せ最適化問題に対する解法アルゴリズムは,与えられた制約条件を満たす実行可能解の中から,目的関数の値を最大または最小にするような解を見つけることが目的となる.従来,最適化問題に対するアルゴリズム設計の際には,制約条件を満たす解をゼロから求めることを仮定しているが,実際の場面では,ある程度の解が既に求められており,その解から始めて,より良い更新解を求めることも多い.本研究では,制約条件に加えて,初期解および初期解からの変更制約が与えられた元での組合せ最適化問題を対象に計算容易性・困難性の解明を目標としている.今年度の主要な研究結果は以下である.(1) 辺重み付きグラフ,初期解となる全域木(すなわち辺集合),変更できる辺の本数が入力として与えられたときに,変更数制約を満たすような全域木の中で辺重みの合計が最大となる問題について検討を行った.任意の全域木について,全域木の辺として選ばれていない辺を新たに追加すると1つの閉路が生成される.この閉路について貪欲戦略により辺を変更することで,初期解とは異なる全域木を得ることが出来る.この貪欲アルゴリズムが多項式時間アルゴリズムを設計する際には,有効な解法となり得ることを示した.本結果については,国内の研究会において公表した.(2) 辺重み付き二部グラフと初期のマッチング辺集合が与えられたときに,変更できるマッチング辺の上界が与えられたときに,出来るだけ辺重みの合計が最大となる問題について検討を行った.従来の近似アルゴリズムを改善するアルゴリズムを設計できることを国内研究会において公表した.(3) 2つの文字列と文字列に追加可能な文字集合が与えられたときに,共通部分列を出来るだけ長くするように文字追加する問題について検討を行い,指数時間厳密アルゴリズムを提案した.研究成果については国内研究において公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況は以下である.(1) 変更制約付きの最小全域木問題について,貪欲戦略が有効な解法になるための重要な性質を発見・証明することが出来た.(2) 変更制約付きの最大マッチング問題について,従来の近似アルゴリズムの近似精度保証を改善することが出来た.(3) 変更文字制約付きの最長共通文字列問題について,指数時間アルゴリズムを設計することが出来た.それぞれの成果を国内研究会において公表した.
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今後の研究の推進方策 |
種々の変更制約付きの組合せ最適化問題について,これまでに得られた研究成果については国内研究会等での公表を行っており,おおむね順調である.今後は国際会議での公表を行う.また,追加で得られた結果についても国内外の研究会や国際会議で公表を行っていく.出来るだけ早く国際論文誌としてまとめて,本研究課題達成を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,10万程度の安価ノートPCを購入していたが,九州工業大学の既存物品を代替として利用したため残額が生じた.また,国際会議での公表が2件,国内学会・研究会での公表が14件あったが,コロナウイルス感染症拡大のために,すべてがハイブリット開催またはオンライン開催となり旅費が不要となった.大各院生による研究補助のための謝金額も予定よりは小さくなった.
次年度は,繰り越し分と含めて,ノートPCの購入,PC関連消耗品の購入を予定している.また,国内学会・研究会での公表のための旅費,国際会議参加のための外国旅費を使用する.大学院生による研究補助,専門知識の提供のための謝金,研究成果を国際論文誌に投稿するための論文投稿費用も必要となる.
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