研究課題/領域番号 |
21K11760
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
関川 浩 東京理科大学, 理学部第一部応用数学科, 教授 (00396178)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 数値数式融合計算 / 近似アルゴリズム / 計算機代数 / 計算幾何 / 多項式の合成 / ボロノイ図 |
研究実績の概要 |
数値数式融合計算は信頼性の高い数式処理を基本とし、部分的に、柔軟で効率がよい数値計算を利用した、信頼性、柔軟性、効率性を合わせ持つ計算法である。その中でもとくに柔軟性を重視した、係数に誤差のある多項式などを対象とする計算法では、最近接問題という一種の最適化問題を解くことになるが、計算量が多いという問題点があった。これを解決するため、本研究は、数値数式融合計算アルゴリズムに乱択アルゴリズムや近似アルゴリズムを援用して計算量を削減し、効率性と柔軟性を持つ計算法を構築することを目的とする。研究は、実数体あるいは複素数体上の多項式などの連続的な問題と、有限体上の多項式などの離散的な問題に分けて扱う。 本研究の目的を達成するため設定した課題は以下の通りである。課題1は最近接問題に対する従来の数値数式融合計算アルゴリズムの構築とその解析、課題2は乱択アルゴリズムや近似アルゴリズムを用いた数値数式融合計算アルゴリズムの構築とその解析、課題3は最近接問題の解についての理論的な解析である。 本年度に得た主な成果は以下の通りである。課題1については、与えられた平面分割図形に近いボロノイ図を求める問題を考察する前段階として、母点が不明なマンハッタン距離によるボロノイ図から母点を求める問題に対しアルゴリズムを提案したこと、課題2については、与えられた多項式にハミング距離で一番近く合成で表現可能な多項式を求める問題に対し、多項式が一つの場合に、すでに構築した近似アルゴリズムを整理、拡張したこと、である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画は以下の通りであった。まず、2021年度に研究を行った項目のうち、多項式の合成に関しては、与えられた多項式にハミング距離で一番近く合成で表現可能な多項式を求める問題では、引き続き、結果の拡張を目指す(課題2、3)。この問題については、多項式の値を複数点で効率よく評価することへの応用もあり、これについても研究を行う。また、2021年度に研究を開始した、幾何学の問題、具体的にはボロノイ図に関する近似アルゴリズムについて成果が見込まれる状況になったので、こちらの研究も継続する(課題2)。 (1)については、2021年度に構築した近似アルゴリズムを整理して発表するとともに(課題2)、複数の多項式に対して値を複数点で効率よく評価することに関する研究を行い、部分的ではあるが、理論的な結果を得た(課題1)。また、多項式が一つの場合に、最近接問題の解に関する理論的な解析を開始した(課題3)。 (2)については、与えられた平面分割図形に近いボロノイ図を求めるアルゴリズム(課題1)を考察する前段階として、母点が不明なマンハッタン距離によるボロノイ図から母点を求める問題に対しアルゴリズムを提案した。 以上の通り、(1)、(2)ともにほぼ予定していた成果を挙げたといえる。したがって、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に研究を行った項目のうち、2023年度は多項式の合成に関する問題を中心に研究を進める予定である。多項式が一つの場合、近似アルゴリズムの出力がどれくらい真の解に近いかの評価についての研究を進め、結果の発表を目指す(課題3)。多項式が複数の場合、とくに多項式の値を複数点で効率よく評価することへの応用を意識して近似アルゴリズムの構築および解の近似度などについて、理論的な解析を行う(課題2、3)。 このほか、参加する国際会議、学会大会、研究会等で本研究に関連しそうなテーマがあれば、積極的に考察を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年9月に北海道大学にて対面で開催予定であった日本応用数理学会2022年度年会が、新型コロナウイルスの感染状況からオンラインに変更となり旅費がゼロとなったこと、研究最終年度ではなく予算の合算使用ができないため、2022年12月、2023年3月の研究集会参加用の旅費として余裕を見て予算を残していたことが、次年度使用額46,290円が生じた理由である。 次年度使用分は、成果の発表、研究者との議論、情報収集などのため、国内外で開催される学会、研究会に参加するための旅費や会議参加費の一部として使用する。
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