研究課題/領域番号 |
21K11771
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
松浦 真也 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (70334258)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 数理曲線 / 視覚的感性 / デザイン生成 |
研究実績の概要 |
本研究では、プロダクトデザインに関し、「デザイン×数理・DS・AI」という立場で研究開発を進めている。具体的には、北欧デザインで用いられているラメ曲線や、それを拡張したギーリス曲線などの数理曲線を用い、次のA、Bについて調べている。 A. 多くの人から高く評価されているデザインは、感性工学の諸手法を用い、数理曲線の幾何学的特性量の言葉で整理すると、どう表現できるのか?特に、数理曲線のパラメータ分布を用いて、視覚的感性が数理モデルとしてどう記述できるのか? B. 視覚的感性について、個人の嗜好性が数理曲線のパラメータ分布を始め、幾何学的特性量にどう反映されるのか?そして、その結果、上記の視覚的感性の数理モデルに、どのような形でどの程度、嗜好性に応じた個人差が生じるのか? 前年度、理論的な解析等を中心に取り組んだため、研究3年目となる令和5年度には、主として、計算機上の技術的な面での課題解決に力を注いだ。特に、個人の嗜好性を把握する上で、障壁になり得る点を発見したため、その解決に努めた。具体的には、数理曲線をコンピュータ上で描画する際に、方程式に含まれる複数のパラメータの値の組み合わせによっては、部分的に数値的な誤差が大きくなり、正確に描画されずに、本来の曲線からは局所的に大きくズレが生じる場合があることが判明した。人間の感性や嗜好性は、ある種のズレに関しては非常に敏感であるため、局所的に不正確であるだけでも、曲線全体に対する印象が大きく変わってしまう。このため、曲線の細部にまでわたり、正確に描画できる方策を模索し、技術的な解決の目途を立てた。さらに、研究最終年度に向け、研究紹介、成果公開、プログラム・スクリプト提供用に、Webサイトの制作を開始し、枠組みの部分を完成させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計算機上での曲線描画に際し、技術的な課題を発見したため、その解決に努めた。本研究では、ギーリス曲線と呼ばれる曲線など、主として極座標表示を用いた方程式で記述される曲線を用いている。しかし、方程式に含まれる複数のパラメータの値の組み合わせによっては、計算途中に、ゼロに近い値での除算が生じるなどして、数値的な誤差が大きくなり、正確に描画されないことがある。このことが、人間の感性や個人の嗜好性を把握する上で、障壁になり、正確な調査・分析が行えない可能性が高い。そこで、Python、R等のプログラミング言語の種々のパッケージや、gnuplot、GeoGebra等のグラフ描画アプリ等を用い、曲線を表示する方程式に関しても、等価ないくつかの表現に書き換えたりするなどして、なるべく数値誤差が小さくなる描画ツールと計算方法の組み合わせを探した。当初、予定していなかったこの作業のために多くの時間と労力を費やしたが、解決に向け、一定の目途は立った。
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今後の研究の推進方策 |
前年度、課題となった数理曲線の描画に関しては、種々のツール・計算方法を試した結果、例えば、PythonのPlotlyパッケージなどを用いて、許容範囲の誤差で描画する目途が立ったので、この方向性で、引き続き、アルゴリズムの遂行と、実装を進める。 また、調査、解析を効率よく行うために、Webページに描画プログラムを埋め込む。この目的には、Plotlyや機械学習用のパッケージとも親和性の高いPython Dashを用いる。これにより、双方向性の高いダッシュボード形式で調査・データ取得ができるので操作性が大幅に向上するとともに、データ取得から解析までが、自動化できる。 今年度はまた、研究成果を実社会で実用的に活用できるようにするために、地元のものづくり企業・団体との連携も進める。具体的には、プロダクトデザインのデジタル化、自動化に関心のある地元企業・団体に対し、研究概要を説明し、社会実装の観点から、実用的な助言を得る。 さらに、令和6年度は研究最終年度となるため、研究成果のとりまとめと成果発表・公表を行う。具体的には、学術研究集会等の場で、研究発表を行う。また、広く一般に成果を公表するため、インターネット上で情報発信する。既に研究紹介、成果公開、プログラム・スクリプト提供用のWebサイトの枠組みを構築済みであるが、このサイトに、研究概要・理論的解析の資料を掲載するとともに、作成した計算機プログラム・スクリプト等を置き、無償で利用できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算機上で数理曲線を描画する際に、細部において不正確となる問題が生じたため、その解決に時間を要した。そのため、各種調査や成果公表等のための出張の機会が無かったので、それらの費用を次年度に繰り越すこととした。技術的な問題は解決の目途が立ったので、次年度において、繰り越し分を効果的に使用し、年度末までに、当初計画していた内容の調査、成果公表を行う予定である。
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