研究実績の概要 |
2021年度においては,閉鎖型BCMP待ち行列ネットワークをスケーラブルに計算できる大規模並列計算環境を構築した.BCMPは従来から存在するモデルであるが,理論研究から実モデルへの応用例は少ない.その原因の一つは,計算量が膨大になることがある.解析的な特性量を求めるとき,ノード数と利用者クラス数からなる膨大な組み合わせから実行可能解を算出しなければならない.インターネットのようなネットワークでは,ノード数,利用クラス数共に大きくなり,計算量も膨大となる.本研究では,現在の計算リソースを有効に活用したBCMPの特性量算出のための並列計算アルゴリズムを提案した. BCMPの基本的パラメタである拠点数N,クラス数C,客数Kについて変化を与えながら計算時間と計算に必要な計算リソースの増減を検証した.並列数128に対して,N,R,Kを変化させた場合の計算時間,使用メモリ,組み合わせ数を示し,今回はN=33,R=3,K=500を基準にして値を変化させた.各パラメタに対し,計算時間や使用メモリに対しての影響度が明らかになった. クラス数Cが増えていくときの利用メモリ量が膨大になることを考えて,シミュレーションでの平均系内人数の算出方法を提案した.具体的に,N=33, C=3, K=500でのシミュレーションを実施して,MVAで算出した理論値との誤差を確認した.今回は網内の総人数Kに対し,各拠点,各クラスでの誤差許容人数を定義し,シミュレーション精度の確認を行った.シミュレーションでも十分な結果を得られたことから,クラス数が大きい場合,C=4~8をシミュレーションによる代替手法で計算することで,少ない計算リソースと計算時間で結果が得られた.またシミュレーションを実施することで,理論値では得られない動的情報も得られ,モデルの分析に相乗効果があることもわかった.
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