研究課題/領域番号 |
21K11776
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研究機関 | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等) |
研究代表者 |
佐藤 寛子 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等), 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50291068)
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研究分担者 |
岩田 覚 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (00263161)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 3次元分子構造 / 類似性判定 / 汎用的最小二乗偏差G-RMSD法 / 分子設計 / 反応予測 |
研究実績の概要 |
分子の立体的な構造は活性や物性を決める重要な要素の1つであり,近年のコンピュータ性能の向上によって高精度かつ大規模な3次元(3D)分子構造データの獲得と蓄積が可能となってきた。本研究では,データサイエンスの活発化と相まって今後さらに活発化すると期待される3D分子データ活用のための新技術の確立と実証を目指し,データ化学と離散情報学を融合させた効率的アルゴリズムを開発し,分子の3D幾何構造に関する応用研究を実施する。具体的には,我々が最近開発した汎用的3D分子類似度判定法G-RMSDを中心に新規アルゴリズムを開発し,分子設計や化学反応予測等における従来法では困難な問題の解決に挑戦する。 令和3年度は以下の3点について重点的に研究を実施した。 まず,G-RMSDを中心とした新規アルゴリズムの1つとして,分子間のRMSD最小値の最適解を保証する厳密解法を開発,実装した。2点目として,商用ソフトウェアMATLABで動くG-RMSDプログラムコードをフリーオープンソースコードOctaveに移植し,汎用性を向上させた。3点目として,分子動力学シミュレーションによる化学反応過程に存在する点としてサンプリングされる分子構造群を最もエネルギーの低い経路を辿る線で繋ぐ最安定経路を同定する新手法開発の基礎データとなる分子動力学シミュレーションを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,データサイエンスの活発化と相まって今後さらなる活発化が期待される3次元(3D)分子データ活用のための新技術の確立と実証を目指し,データ化学と離散情報学を融合させた効率的アルゴリズムを開発し,分子の3D幾何構造に関する諸問題の解決に取り組む。具体的には,我々が最近開発した汎用的3D分子類似度判定法G-RMSDを中心に新規アルゴリズム開発と応用研究を実施し,薬物設計や化学反応予測,分子検索における従来法では困難な問題の解決を狙う。 令和3年度は,以下の3点について重点的に研究を実施した。 1点目はG-RMSD新規アルゴリズム:分子間のRMSD最小値の最適解を保証する厳密解法を開発した。交互最適化法を用いる既報のG-RMSDアルゴリズムは一種のヒューリスティック法で,計算時間は短いが最適解は保証しない。一方,今回開発した分枝限定法を用いたものは,計算時間はかかるが最適解を保証する。新方法を適用した結果,既報の交互最適化法の結果の多くは最適解だったことが保証された。同時に必ずしも最適解ではなかったものもあり,今後,両手法を併用することで,分子類似性についての実用的かつ厳密な議論が可能になると期待される。 2点目はG-RMSDの汎用化である。G-RMSDはフリーオープンソースとして公開しているが,MATLAB(商用)言語を用い,実行にはMATLABライブラリが必要である。そこで,G-RMSDをフリーオープンソースOctaveに移植し,MATLABがない環境でも動作できるようにした。本移植によりソフトウェアの汎用性が向上した。 3点目として,化学反応の最安定経路を同定する新手法開発のための基礎データとなる分子動力学シミュレーションを実施した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画に則り初年度の研究を開始し,概ね計画通りに進捗している。初年度はアルゴリズム開発やプログラムの移植,分子動力学シミュレーションという,本研究の基本手法とデータ基盤を重点的に拡充した。2年目もこれらを継続するとともに,化学反応経路予測や遷移状態予測などの応用研究のための手法開発の検討にも注力する。当初の研究実施計画に変更はなく,これに沿って研究を推進していく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
MacBook1台とWindowsPC1台を購入する予定であったが,価格変動でWindowsPC1台分の予算が計上できなかった。次年度使用額に次年度配分金額を足して当該WindowsPCを購入する予定である。なお,今年度の研究執行には古いWindowsPCを利用した。
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