研究課題/領域番号 |
21K11778
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
安田 宗樹 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (20532774)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | データ前処理 / 確率モデル / 統計的深層学習 / ベイズ統計 / 近似アルゴリズム |
研究実績の概要 |
本研究は、確率モデルを基礎として汎用的に利用できる積極的前処理器の確立を目指す。簡単に効果的なデータ前処理の実現が本研究の最終的な目標点である。本年度は、主に以下のような研究成果を得た。 (1)空間モンテカルロ積分法の一般化最小2乗法を基礎とした高性能化:本研究の基礎をなす確率モデルは計算量的に困難な統計処理を必要とする。本成果は、有効な近似計算法として知られている空間モンテカルロ積分法に数理統計学の知見(一般化最小2乗法)を転用させ、更なる近似高性能化に成功した。本提案手法は、理論的に性能が保証された近似法であり、かつ、実験的にもその有効性が確認されている。本成果は、日本物理学会第77回年次大会、及び、情報処理学会第84回全国大会で発表済みであり、国際的学術論文誌に投稿中である。 (2)制限ボルツマンマシン前処理器の提案とノイズ耐性の確認:制限ボルツマンマシンを前処理器として利用するため方法を提案した。そして、実験を通して、提案の確率的前処理器が特にランダムノイズに対して非常に強い前処理器となっているとなっていることを見出した。本成果は、情報処理学会東北支部研究会で発表済みであり、現在、理論的な考察を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記【研究実績の概要】で述べた研究成果(1)、(2)の成功が根拠となる。研究成果(1)は広く一般の確率モデルに対して適用することのできる一般的な手法であるため、本研究のスコープとなる分野を超えて、より広い応用分野への貢献が見込まれる。もちろん、当成果は本研究の目的である「確率的前処理器」の作成にも直接的に貢献する。研究成果(2)はより直接的な成果である。本研究が目指す確率的データ前処理器のプロトタイプを制限ボルツマンマシンを基礎として構築し、更に、その前処理器のノイズ耐性に対する有用性を実験的に明らかとした。本成果は、本研究課題の最終的な成功を強く示唆するものとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、研究成果(2)の深化が重要である。当成果は実験的に示されたものであり、理論的な考察はまだ未発達である。理論的に提案の確率的前処理器の有用性が示されれば、より強固な方法論となるはずである。したがって、確率的前処理器に数理統計学・統計力学・情報理論の考え方を適用し、実験的に示された有効性に対する理論的な考察を深めていく。 また、制限ボルツマンマシンを超えて深層ボルツマンマシンを基礎とした前処理器の提案にも着手し、効率的な処理アルゴリズム開発と同時に、その前処理器としての有用性の検証も進めて行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で参加予定であった学会・研究会等が中止、または、現地開催中止となり、その分として計上していた予算が次年度使用額となった。 次年度使用額は本年度中止になった分の参加学会・研究会を次年度に移し、次年度使用額をそれらの旅費として使用する予定である。
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